□読み切り
1ページ/18ページ

幾度、朝が来て夜が来たのだろうか…繰り返されるこの日常。私は変えたいと思った。何回も、何回も…
こんな錆び付いた日常をどう変えればいいのだろうか。考えるだけ無駄な気がする。私自信を変えないと変わらない気がして…
道を歩く私。私を追い越す人がいればそうでない人もいる。無性に怠い。学校なんて行きたくない。当たり前のように呼吸をして当たり前のように人て喋り、その当たり前が断末魔のごとく切り裂かれていく。
あの学校も当たり前のような存在になっている。慣れたくないのに慣れてしまう自分が恨めしい。そして怖く感じてしまう。ほら、校門にはあいつらがいる。


「スカート、短いよ」


学校の中でも出来ることを学校の前でわざわざ点検している風紀委員。見ているだけだとやばいとか普通に思うけど、実際点検されるとそうでもないと感じる今日この頃。並盛最強とか言うけど至って普通な人間…私には関係ない。全く関係ない。


「ねぇ、君」


今日は厄日か?声をかけられるとか予想外。ただでさえ、こんな日常が怠いのに。無理矢理足を動かしているねに変わりないのに…あぁ、苛々する。サンドバック変わりにこいつを殴りたい。

「応接室に来てね、じゃないと咬み殺すから」

……今日は完璧な厄日だ。よりによって風紀とはな…とんだ災難だ。


おはよう、無理矢理つくった作り笑い。大概のみんなは返事をかえしてくれる。まただ。当たり前。退屈すぎる。こんなのなくなってしまえばもっと楽なのに…神様って不公平だ。たまには人間のいうことくらい聞いてくれたっていいじゃないか…


「退屈だ…」


そうだ、応接室にいかなくちゃいけないんだっけ?怠い…非常に怠い。呼ばれることが嫌いな訳じゃない。風紀だとなんだとか、そんなものに軽く理由もなく呼ばれることがとても怠く感じるだけ。暇つぶしにはなるかも知れないけど…


一旦入った教室を出て、応接室に向かう。何故か廊下が長く感じた。出口のないトンネルをひたすら歩いているような。今はそんなことは気にしていられない。

目の前には応接室。何故かためらいがある。私は立ち尽くすだけ。ドアノブに手を掛けようとするが上手くいかない。怖がっているのだろうか…


「何そこで立ち止まっているの?早く入りなよ」

ドアの向こうから声が掛かった。多分、朝声を掛けられた人物だろう。仕方が無しにドアノブに手を掛けた。もう、どうでもよかった。どうにでもなってしまえばよかった。

「遅かったね」

……悪かったな、と言いたかったがなんか言ったら命がないと察して口をつぐんだ。拒否権はないよと言わんばかりのオーラがかなり漂っている。


「すみません。遅くなって…ところで私に何か用があるんですか?」


呼び出しといて用がないとかまずないだろう、と思う。でも、分からない。唯我独尊なこの人だから何が起こってもおかしくはない。

「君、今時珍しい子だよね。僕に呼び出しされた人は皆逃げるのに」

「あなたが怖いからじゃないですか?」

「じゃあ君は怖くないのかい?」

「怖くないですね。私と同じ人間ですから」

そう、この人は私と同じ人だ。毎日がつまらないに決まっている。だって同じ顔をしているから。退屈で、退屈で堪らないんだ。

「君を退屈じゃなくさせてあげるよ」

「は?こんな話しをしている時点で退屈ですが…」

ぐるぐる回る。言葉が見つからない。何をどうしろっていうのだろうか。こんな現実を見ない私をどうしろっていうのだろうか。現実を見ない私をどう扱ったって…
変わりやしないのに…

「僕の側にずっといればいい」

「ちょ、待って…」

「待たないよ。ようやく見つけたんだ、君みたいなひと」


日常が変わった気がした。有り得ない形で…こんなのって…現実をみない私にとっては衝撃過ぎるよう…な…


「鈍感だね、こんな僕が女を側に置くなんて前代未聞だと思うけど」

「――!?」

「僕は君を見ていた。毎日がつまらなそうな顔して普通の日常が怠くて、僕と同じ人間がいる。君に次第に惹かれていったんだよ。まだ、言わないとダメ?」

つまりそれって……

「好きだってことですか?」

「早く分かってよね」


幾度の朝が来て夜が来たのだろうか。
当たり前が崩れたのは何時だろうか…
少しばかり日常が好きになったかもしれない…

私は恥ずかしさと嬉しさが混じって、無理矢理な笑顔じゃなく自然の笑顔を出すことができた。






(少しだけ変わった)
(私の日常が…)

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ