□読み切り
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器が小さいのとそうでないの。大きければ大きいほどデザインはあまりよくない。小さいのはデザイン豊富。何が言いたいのかと言うと、最初は小さいが成長すれば大きくなる。小さいのは回りから色々言われ、デザインは様々。大きくなると回りからは色々嫉まれる。デザインはなくなる。デザインは支援があるかないか、器は偉いか偉くないか。


まるで貧富の差のようだ―――


「器の大きさってなんだろうねぇ」


ニコチンが空を舞う。左手に挟まれている煙草からは煙りが立ち込めている。
ゆらゆらと昇るその煙は決して身体にいいものではない。寧ろ毒になる物質だ。
そんなものを中毒者のように吸い続ける。


「100%のうち半分は私が吸収しているねぇ」


吸ったばかりの煙草を指で弾いて捨てる。捨てた先にはボンゴレの右腕が煙草を吸っていた。
ここは二人だけに作られた喫煙場所。ボンゴレのなかには他に煙草を吸う人はいるが二人は違った。ヘビースモーカーなのだ。一日に何箱も吸うくらいの。
オフの時は必ずこの場所にやってくる。第一片方はボンゴレの右腕と恐れられ、さらには嵐の守護者だ。権力は僅かながらある。プライベートの時間のために作られた場所といっても過言ではない。


一方もう一人は守護者ではないが、幹部の一員でほかの者から一目置かれている存在だ。下手に逆らえない。
彼女もまたヘビースモーカーだ。でも最近吸う回数を減らしているようだった。それに気付いた右腕は……


「お前らしくないな」


「何?」


「お前が自分の心配するなんてよ」


「心配なんかしてないわ」


「じゃあ何故吸う回数を減らすんだ?」


「貴方に答える義理はないの」


答えたらつまらないじゃない?とため息混じりに言った。

喫煙場所の柵に寄り掛かり曇天の空を見上げる。雲ばかりで青空なんて見えない。灰色で塗り潰されていて少々気味が悪い。


「一つだけ教えて上げる」


曇天の空を見上げながら、呟いた。優しく風がきめ細かい肌を撫でる。


「死ぬのが怖いからよ」


「それが煙草を減らす理由と何の関係がある?」


「自分の気持ちに嘘を付かないようにしたの。私はね――」




"好き、だから――"




「――!」

上手く聞き取れたかどうかは分からなかったが、そう言ったようだった。
誰が好きとかはすぐ分かるはずだ。
喫煙所は二人しか今はいない。さっきから質問をしている人が好かれている。


「好きな人とはずっと一緒にいたいって思うでしょう?孤独死するのは嫌なのよ」


感情一つ変えないで、淡々と放す。
どうしようもない空気がダラダラと流れるだけで、あまり良くない。
沈黙が横切り、話そうにも話しにくい環境へと変化していった。


たわいもない話しは出来なくなった…


昔からある言葉がある。



「百も承知」


「うん」


「俺が言っている分かっているよな?」


「百も承知」


器の大きさも、理解の仕方も全く違う二人だったが、結局は気の会う二人だった。


「煙草を減らす最大の理由は――」




ずっと貴方の傍にいたいから・・・








(私は傍にいるために生きる)
(楽しみが無くなっても、か)

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