ほのかに薫ものども

□1 血の匂い
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違う形で生まれた―存在を示すものなど何処にもない―この世に生きている価値は本当にあるのだろうか…

気付いたら私は並盛という場所にたどり着いていた…ここが私の運命の場所だと知らずに…


1 血の匂い

朝日が昇る…その朝日が木の上で寝ている人間らしき人物が照らされる。朝日が当たったせいかその人物は眉間に皺を寄せる。どうやら朝は苦手な様子。

「んん…あ、朝か…」

木の上で上半身を起こしゆっくり目を擦る。完全に朝日が昇り人物の姿がはっきり見えた。

人物は女の子。年齢は高校生くらい…それにしては少し大人っぽい顔をしている。髪の毛はストレートのセミロング。緑っぽい色をしている。目の色は真っ赤な赤。そして一番目立つのは背中に生えている黒い羽。つまり悪魔の羽が生えていた。

「うっ…頭がクラクラする…血が足りないのか…」

彼女の名前は薫。意味はあんまりない。ここではっきり言おう。彼女はバンパイアだ。しかし、バンパイアとはまた違ったバンパイア…彼女は半分人間の血が混じっている、半分人間、半分バンパイアなのだった。

「……町か…これからどうするかな…」

薫はいくあてがない。両親とは遠い昔に他界してしまった。ぶらぶらと飛び回っていたらいつの間にかここに来ていた。

「まぁ、ここに居着くのも悪くないな…まず、血を少し分けて貰わないと…」

半分人間とはいえど半分バンパイア…血はやはり必要になる。しかし、完全なバンパイアよりはそんなに摂らなくて平気らしい…

薫は一度伸び上がり背中に生えている羽を仕舞うべくあるものを取り出した。

それは鎖だった。髑髏と十字架がついた鎖。それを首にかけると背中の羽は無くなっていた。

「さてと…いい人間がいるといいんだけどね…」

あんまり期待はしていなかった。いい血を持った人間など最近いなくなっていたから…

薫は木からおりた。それも綺麗に…そのまま道路にいくと、まだ朝なのにバイクの音が聞こえてきた。

薫は朝が苦手で弱い。バンパイアの特徴とも言えよう。因みに低血圧。なので騒音は苛々させるのだった。

「よし…バイクに乗っているやつの血をいただくかな」

それが間違えだった。これからどうなるのかも分からずに…
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