ほのかに薫ものども

□1 血の匂い
2ページ/15ページ


バイクの音が徐々に近づいてくる。薫は道路の脇で待っていた。

「どんな血の匂いをしているのかな…なんか楽しみ…」

ワクワクしながら道路脇で待っている薫だった。そして、バイクは姿が見えるくらいまで近づいて来ていた。

「ん?あれは…男の子?」

そう、男の子がバイクを走らせて……

「いや…あれは男の子じゃなくて青年だ…へ〜美男子か…期待できそう…」

薫は唇を舌で舐めて言った。そして口元を緩めた。その口からはまだ成長途中の牙があった。しかしそんかに咎ってはいない。人間で言えば八重歯に近いかもしれない…でも、鋭い牙。噛まれたら痛いに決まっているに違いない。


ブルル…


とうとうきた…バイクの美男子…薫は道路の真ん中に立ちバイクを止めようとした。しかしバイクは自ら止まった。

「(自ら止まった?)おはよう…ちょっといいかな?」

薫は優しく微笑みながらいった。脅したくはなかったからだ…別に人間が嫌いではない…

「君、僕の前に立つなんていい度胸しているね…」

「それは失礼したね…でも、君もいい度胸しているよ?」

血を貰うからね……

そう、薫は思った。でも少しだけ、殺しはしない…

「ワォ、君気に入ったよ…君はただの草食動物じゃないみたいだね…」

「は?そーしょくどーぶつ?何言ってんの?」

半分人間とはいえど人間の知識は余りない…青年が言っている意味なんざ訳が分からない…

「…君、名前は?」

「名前なんて言っている暇はないよ。私は君の……」

(ヤバッ……)

薫は目眩を覚えた。まぁ、貧血にも似たような感じで…

(畜生…視界が歪んでいる)

「君、大丈夫なの?フラついているけど…」

青年が驚いている程だそうとう悪いに決まっている。薫はこの青年の血を吸うことを断念しようとした……その時だった。

薫の視界は闇に閉ざされてしまった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ