ほのかに薫ものども
□1 血の匂い
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バイクの音が徐々に近づいてくる。薫は道路の脇で待っていた。
「どんな血の匂いをしているのかな…なんか楽しみ…」
ワクワクしながら道路脇で待っている薫だった。そして、バイクは姿が見えるくらいまで近づいて来ていた。
「ん?あれは…男の子?」
そう、男の子がバイクを走らせて……
「いや…あれは男の子じゃなくて青年だ…へ〜美男子か…期待できそう…」
薫は唇を舌で舐めて言った。そして口元を緩めた。その口からはまだ成長途中の牙があった。しかしそんかに咎ってはいない。人間で言えば八重歯に近いかもしれない…でも、鋭い牙。噛まれたら痛いに決まっているに違いない。
ブルル…
とうとうきた…バイクの美男子…薫は道路の真ん中に立ちバイクを止めようとした。しかしバイクは自ら止まった。
「(自ら止まった?)おはよう…ちょっといいかな?」
薫は優しく微笑みながらいった。脅したくはなかったからだ…別に人間が嫌いではない…
「君、僕の前に立つなんていい度胸しているね…」
「それは失礼したね…でも、君もいい度胸しているよ?」
血を貰うからね……
そう、薫は思った。でも少しだけ、殺しはしない…
「ワォ、君気に入ったよ…君はただの草食動物じゃないみたいだね…」
「は?そーしょくどーぶつ?何言ってんの?」
半分人間とはいえど人間の知識は余りない…青年が言っている意味なんざ訳が分からない…
「…君、名前は?」
「名前なんて言っている暇はないよ。私は君の……」
(ヤバッ……)
薫は目眩を覚えた。まぁ、貧血にも似たような感じで…
(畜生…視界が歪んでいる)
「君、大丈夫なの?フラついているけど…」
青年が驚いている程だそうとう悪いに決まっている。薫はこの青年の血を吸うことを断念しようとした……その時だった。
薫の視界は闇に閉ざされてしまった。