ほのかに薫ものども

□1 血の匂い
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目をおもむろに開いてみる…まず視界に入ってきたのは白い天井だった。そして身体の後ろにはふかふかな感触。それは、ソファーだった。薫はゆっくり上半身を持ち上げた。

「……ここは?どこだ」

薫は見慣れない光景にただ驚くしかなかった。ずっと天井を見ていた。回りなんて見る気がない。

しかし、一つだけ分かることがあった。それは此処には薫一人しかいないことだ。だったら今のうちに逃げるのが先決。だが薫は…

(身体が動かない…血が足りないせいか…)

そう、逃げようにも逃げられない。血が足りないために身体がいうことを効かないのだった。


ガチャ……


扉を開ける音なのか、何かを開ける音が聞こえた。その音に薫は警戒を覚えた。

しかし、警戒なんてしなくてよかった。音がしたのと同時にココアの匂いがしたからだ。

(ココアだと?私が好きな飲みものの一つだ…)

「目、覚めたんだ…」

「なっ……」

声もなかなか出なかった。まるで金縛りでもあったかのように自由ではなかった。自分を狙っていたのならココアなんて出すわけがないだろう…しかし、此処でも薫は警戒していた。もしかしたらココアに毒が盛られているかもしれない…

「君、なんでそんなに警戒しているわけ?」

「……」

理由は沢山ある。だが、薫は絶対に言わない。何故、警戒するのかを……

「これ、ココアだけど飲める?」

「……血を……血が欲しい…」

ココアもいいがそれよりも血が先だった。このままだと危険だ。最悪の場合死に至る。

薫は力を振り絞って腕を動かした。


「?君なに言っているの?血が欲しいだなんて……」

「……少し、だ、けだから…」

薫は血の欲しさに…いや、血に飢えていた。欲しくて欲しくて堪らないのだ。

(血の匂い…期待した甲斐があったよ…)

薫が血の事しか頭になく目の前にいる人間に手をだそうとしていた。

「……そんなに欲しいの?」

「早くして…お願い…」

自分が何ものであるかばれるのも時間の問題。薫は必死に頭を上下に下げた。


「君だけだよ?ほら、どこが1番いいの?」

「こっちに来て…すぐに済むから…」

人間は言われた通りにした。薫は首に手をあてて血を吸う準備を行った。
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