ほのかに薫ものども

□2 光の影
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《綱吉side》

「おい、ツナどうしたんだ?微妙に顔色わりぃぞ?」

「なんでもないよ、なんでも」

さっきから聞こえる声。薫ちゃんが泣いている間にも聞こえた。

――無くなりはしない――
―恐怖という感情は決して―
―――終わりなき真実を―――

血塗られた真っ赤な真実を―



その声を聞いた時俺は言葉が出て来なかった。二人の声が聞こえた。男と女の声…

そして、あの声…

――冥界の扉今開かれよう――
―――導け我らの野望―――


冥界の扉ってなんだろう。聞くだけで身の毛がよだつ。冥界ってあの世のことだろ?その扉が開くとなれば危ないんじゃ…

相変わらず薫ちゃんはリボーンの膝の上で規則良い寝息を立てて寝ている。薫ちゃんの身に何かが怒ろうとしている。

「これからどうするの?」

必死になって出した言葉がこれだった。多分、いや、確実にリボーンにはばれているだろう。あいつは敵味方関係ないから…


「……一旦ツナの家に移動するか…薫にはまず家が必要だ」

「家…か…」

そうだよね。薫ちゃんには家がない。バンパイアは外で過ごすことが多いらしいから人間のように家と言うものはない。そういえば薫ちゃんの家族は…

「ねぇ、リボーン。薫ちゃんの家族って…」

「父親は行方不明。母親も行方不明。詳しくは調べられない状態にある」

……なんだろ。知っていた…聞いたことがあるような気がする。こんなことって普通あるか?今日初めて会ったのに聞いたことがあるって…無意識に情報を耳にしていたのかな?

でも、ずっと一人だったんだ。薫ちゃんが泣いていたときリボーンは「もう、一人じゃない」とか言っていたな。そう言う意味だったんだな。一人でここまで生きて来たんだ。様々に事情を抱えながらも…


外は綺麗な青空が広がっている。時刻は昼時。流石に外にはバンパイアはいない。俺たちハンターは夜によく活動するけど…最近昼間でもよく活動するようになっている。リボーンに理由を聞こうとすると何にもしてないのに銃を突き付けてくる。そんなに知りたいか?と言いながら…


「ま……って……いか…ない……で……おいて……いか…な…いで……」


「寝言か…」

リボーンがそう言った。あんまりいい夢じゃないらしい。ふと気が付けば薫ちゃんの目からまた涙が流れていた。皮肉にもそれが綺麗に見えてしまった。俺ってばこんな時に何考えているんだよ…

「赤ん坊、早く移動したほうがいいんじゃない?今時、夜だけ奴らが活動するとは限らないからね」

え?奴らってバンパイアのことか?つ、つまり昼間でもバンパイアがいるってこと?

「今更気付いたのか?ツナ。全く鈍いにも程があるぞ」

「気付いていたよ!最近協会のほうで昼間活動が多いから…」

「それも一理あるが、それは違う」

「はぁ?」

あーもう、リボーンの言うことってなんか突っ掛かるんだよなー。なんていうかこうさ…

「さてと、俺が薫を運ぶ。雲雀は並盛周辺を確認してくれ、奴らが張っているかもしれない」

「わかった。そういうのは任せておいて」

「ツナ、お前は勿論、俺と来るんだ」


いや、分かっているから…ここに来たのは薫ちゃんに会うのが目的だったし…用が済んだら直ぐに家に帰るつもりだった。でも、事情が代わった…


――早く!早く!我らに時間は無し――
――時は遅し、一刻もやらねばならぬ――


「あぁっ!一体何だよ、もう!」

まただ。なんで俺なんだよ、よりによってなんでこの俺?三回目だ…

「どうしたんだ、ツナ?さっきのから…」

「声が聞こえるんだよ…今ので三回目だよ」

「声が聞こえる?俺には聞こえるなかったが」

俺だけか声が聞こえるのは…恭弥さんも聞こえてない様子だし…

一体何が起ころうとしているのだろう…俺には全く分からない…そう、全く…
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