ほのかに薫ものども
□3 逆襲の兆候
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物語は突然始まって、唐突に終わる。
誰も終わった物語の先なんか知らない。
でも、もし終わったはずの物語に先があるとしたら?まだ、終わっていなかったら?
嗚呼、世界はまだ続いているんだ――
まだ、続いて、い、るんだ、
3 逆襲の兆候
今の季節に相応しくない風が少し開いた窓から入ってくる。その風は優しく、とある二人を包んでくれた。寝息と風の音だけが聞こえる部屋。そして床には色の変わった血痕が残っていた。でもそれはまだ新しいものだった。
その血痕を眺めるのはボサリーノがよく似合うハンターのリボーンだ。彼はこの血痕が出来た理由を知っている。時間が立った血痕は落とすことは出来ない。フローリングの上なら未だしも、絨毯の上となれば話しは別だ。まるで記憶されたかのように染み付く。証拠隠滅なんてもっての外だ。
ベットの上には規則正しく寝息を立てる薫がいる。床には綱吉が布団ど寝ている。昨日の出来事で気を失い、そのまま夢の世界へと旅立った。布団は嫌々ながらもリボーンが準備してあげた。
「んっ…」
「お。起きたか、ダメツナ」
「あ、れ?俺は一体…」
起きて早々視界に入ったのはある意味師匠であるリボーンの姿。何故、自分が布団に寝ているかなど疑問に思うことは多々あったが、綱吉は気にせずにいた。思い当たることが一つだけあったからだ。
「お前、気絶したんだぞ。夢に旅立った後も酷くうなされていたな」
「夢、そうだ、俺は夢を見たんだ。あまりにもリアル過ぎて。確かジョット…」
「おい、今なんて言った?」
「だから、リアルな夢」
「違う、その後だ」
「ジョット…」
改めて綱吉の口から聞いたリボーンは綱吉に背を向け、ボサリーノを深く被った。口はきつく結んでいて悔しそうにしている。綱吉はその様子なんて分かっていない。
「ツナ、一旦協会のほうに戻るぞ」
「え?なんでまた急に」
「薫も一緒にだ。雲雀、獄寺、山本の三人に連絡を入れておけ。これからアルコバレーノを全員を召集する」
「――!」
アルコバレーノとはイタリア語で虹という意味がある。最強のハンターとして世界に名を轟かせている。リボーンもその一人だ。
団体行動を好まない人ばかりな為、基本個人行動が多い。自由にハンターの仕事を行っているせいもあり、居場所は特定出来ない。世界のどこかにいるはずだ。そんな彼らを召集するとなると草むらの中から針を探すと同じくらい重労働になる。
「アルコバレーノの召集?なんでまた…」
「お前に知っておいてほしいことがある」
「それと薫に何の関係があるんだよ」
「ツナ、お前がみた夢はただの夢じゃねぇ。他に誰がいた?」
「女の人がいた。薫ちゃんにそっくりの」
「そうか…」
リボーンはまだ寝ている薫に目をやり、こう言い放った。
「パルカの母を持つ子」
これがなんの意味を表すかは綱吉は分からなかった。