禁断の花園
□第3章〜過去は過去〜
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side皆人
「…人、皆人!」
『え、何?ゴメン、周りの景色に見取れてた』
そんなの嘘だ。
気持ちが不安定になっている。
俺には故郷と呼べる場所がない。だから、浩之の故郷と言われてもピンと来ないし、疎外感を感じる。
それに昨日のこと。
帰り際、魚住先生に有名ロックバンドの来日公演に誘われた。
「浩…志摩先生とじゃないと嫌なのかい?」
浩之のことを下の名前で呼びかけていた。
浩之と魚住先生には何か関係があるのか…?
気になって気になって仕方がなくて、昨日の夜も、行きの電車でも落ち着かなかった。
浩之のことが聞きたいならライブへ来い―――暗にそう聞こえた。
行くべきなのか、相談すべきなのか…答えは出ない。
「浩之、家に行く前に寄りたいところがあるんだ。いいかな?」
浩之の切なくて哀しそうな顔を見たら嫌だ、なんて言えなかった。
『ここ…』
浩之が連れて来てくれたのは寺だった。
歴史的な建物でもなさそうな普通の、どこにでもありそうな寺…
ここに何があるっていうんだ?
浩之はここに来てから遠い目をしたり、うっすら涙を浮かべたりしている。
俺の知らない浩之……
怖くて浩之の手をにぎりしめた。
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