甦る者

□封印解除
3ページ/18ページ


5教科の試験が終ると下校時刻になっていた。
部活がある人はすぐに教室を出ていく。部活がない人は友達と固まって談笑していた。

「今日のテストの結果って、いつ分かるの?」
「この学校採点早いから、明日には掲示板に貼り出されるよ」
「そうなんだ?」
(意外……)
「柏木さんは、これから部活?」
「葉月で良いよ。友達でしょ?私も彩乃って呼ぶし」
彩乃が名字で呼ぶと何度も呼び捨てで良いと、笑った。
葉月は友達同士での"さん"付けを嫌う。理由は壁を感じるから、らしい。
葉月らしさに彩乃も笑顔を見せた。
「部活だったよね?時間があるなら見学に来ない?」
話を元に戻し、葉月は見学に誘った。
(また突然ね。どんな部活をしてるのかも聞いて居ないのに)
どこか抜けてる葉月だが、不思議と嫌な感じがしない。
前の学校では部活に入っていなかったが、、葉月が居るなら部活見学もたまには悪くはない。
そう思ったものの、彩乃は今日のテストが気になっていたため、見学は明日する約束をして教室をでた。


「葉月、今の子は?」
彩乃と入れ違いに一人の少年が入ってきた。
教室に残っていた女の子達が黄色い声をあげる。

「あすか!」
教室に入ってきたのは、葉月の彼氏 結城あすかだった。
クラスの女の子たちの視線は当然二人にむく。
「転入生の須藤彩乃さん。部活の話をしたら、明日見学するって言って帰っちゃった」
女の子たちの視線を気にすることなく、葉月は微笑みあすかを見上げた。
「そういえば、先生がいってたな……」
誰も居なくなった廊下に視線を向け、あすかは納得する。
あすかは休み中、教師に捕まり転入書類まとめを手伝わされていた。
そのあとすぐ、視線を葉月に戻した。彼の瞳は「聞きたいことがある」と語っている。
(ヤバい!!)
視線を受け、ビキッと音が聞こえそうな反応を葉月は見せる。
「ところで、今日のテスト出来たのか?」
あすかが葉月の教室に来たのは、実力テストについて聞くためだった。
(やっぱり…。もう少し遅く来てくれたら逃げれたのに…。話そらさないと)
この場をどうにかして逃れようと葉月は思考を廻らす。
その様子は蛇に睨まれた兎のようだ。
「…とっ取り敢えず、部活行こうよ。山本先輩怒ってるかもしれないし、部室荒れてるかも知れないし!!」
必死に笑顔を浮かべ、葉月はさっさと教室をでる。
そのの行動に呆れながらも、あすかも葉月の後ろをついていく。
「まぁ、明日になれば結果が分かるからな。今日は何も言わないよ」
この二人のこのやり取りはテストがあると、毎度同じ事をしている。二人にとってはもはや恒例。暗黙の了解である。
しかし、葉月は逃げる事を辞めないのだった。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ