甦る者

□予言
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CHAPTER 1


豊かな森と広大な大地が広がる。緑が多い世界の中心に、大きな街がある。
街の中は、野菜・果物を売る店が並び、活気に満ちている。ところどころで、笑い声が響き、明るく賑やかだ。
街の奥にはとても広い湖がある。
水はとても清らかで、街の人々は生活用水に使用していた。

多数の国が集うこの世界は、一人の帝王によって統一されている。



帝王の名はイディア。

今年19歳になる、16代目の王。




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お城は湖の端に建っている。
その広さはかなりの物だ。
お城だけでも十分あるが、その倍以上に庭が広がっている。
庭には、噴水、小さな休憩所、兵士達の宿舎、訓練場がある。
そして、一番奥は深い森になっている。

本日の天気は晴天。しかし、ところどころに黒い雲が見える。
(雨でも降るのか?)
帝王イディアはそんなことを考えながら、庭に面したテラスで、優雅にお茶を楽しんでいた。


「イディア様!!!」
廊下に大きな足音を響かせて、一人の若い兵士が駆け込んできた。
必死に駆けてきた成果、兵士の呼吸は乱れていた。
「どうした?騒々しい…」
イディアはカップをテーブルの上に置き顔を上げた。
蒼碧の髪が太陽の光を浴びて、きらきらと輝いた。
兵士は、その優雅な容姿に一瞬目を奪われた。
「何だ?」
じっと見られるので、イディアは不思議そうな顔をする。
もともと、兵士達が血相を変えて騒ぐこと自体が珍らしいのだが。
「・・・っ!大変です!西の森で魔物が暴れています!!」
兵士ははっとして、駆けつけた理由を話した。
「何だって!?」
それを聞いたイディアはとっさに立ち上がった。
その振動でテーブルの上に置いてあったカップか、音を立てて倒れた。
穏やかな表情が一瞬で険しいものになる。

帝国で魔物が出現するのは珍しいことはない。それでも、イディアの力の甲斐あって、人間と魔物は共存という形で落ち着いていた。
魔物が人里に出てくることもなく、平和が続いていた。
魔物が暴れるなど、あるはずがないのだ。
それが、自らの意思で暴れている。特に西の森は魔物が多く生息している。
人里からは離れているとはいえ、人間を襲うようなことになれば、帝国に不安をもたらすことになる。
それはどうあっても避けなければいけない。


「今ヒスイ率いる特殊部隊が、西の森へ向かっています」
「そうか…。西の森付近に警戒と避難令の通達は?」
「ヒスイがすでに」
「そうか、持ち場に戻ってくれ」
イディアは兵士にそう告げると、地下室へと急いだ。
目的の場所は書庫室。そこには帝国が成立した以前からの書物が残されている。
イディアは明かりを灯すと、一番奥の扉に向かった。
扉のまわりは何もなく、厚い壁があった。
昔から人が寄り付かないその場所は、埃でいっぱいだった。
足を進めるたびに埃が立ち上り、洋服を汚す。が、今はそんなことを気にしている場合ではない。
イディアには確かめなければいけないことがあった。

(封印が解かれたと言うのか?《彼》の予言通りに…)

イディアの他に魔物を制御することが出来る人物は一人しかいない。
その人物は、はるか昔1500年ほど前に《彼》によって封印されたはずだった。

その人物の名は


シャッテン



闇に住み、世界を闇世界へと導く者。闇に属する者たちを従え、人から生まれた負の心を好む。
闇を統一する王。




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