短編小説
□◇言の葉遊び◇
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『押し花』
貴方は僕に微笑んでくれた。
たったそれだけだった。
たったそれだけだったけど,僕には充分過ぎて
耐えられないと,思った。
貴方を失うなんて,
耐えられないと,
思った。
だから,
だからね。
貴方の想いごと押し潰して
永遠に枯れないようにして
綺麗なままで閉じ込めた。
もうその声を聴くことはないけれど,
優しく撫でてくれることはないけれど,
貴方を失うことに比べたらどうってことない。
これで貴方は永遠に僕に微笑んでくれる。大満足。
なのに可笑しいね。
頬を伝うこの涙が,
嬉し泣きじゃないことを僕は知ってる。