擬人化部屋
□狂気の目覚めを歓迎しようか
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振り向いたその、後ろの正面だあれ。
得意の推理をしなくたって、そんなものすぐに解るわ。
いくら気配を消していても、足音を立てずにいたとしても、
私の後ろにいるのが誰なのかくらい、解ってる。
その人が何を思って私を尾行してるのかも、ね。
不器用な人。
歪んだ愛を、私が受け入れられないと思い込んでいる。
馬鹿な奴よね、私だって、
充分歪んでるっていうのに。
≪狂気の目覚めを歓迎しようか≫
今日も、いる。
気配がなくても、足音が聞こえなくても、
そこにいるんだって解る。
それが何故だか、貴方は分かるかしら?
「…いい加減、話し掛けるか何かしたらどうなのよ?」
待っても待っても何も行動を起こさないアイツに苛立って、つい私から話し掛けてしまった。
私が気付いていると分かって観念したのか、消してた気配が現れる。
ほら、やっぱり。
「クマ吉くん」
「なあんだ、バレてたの」
半笑いの表情で私を見据えるクマ吉くん。
肩を竦め、やれやれと首を振る。
「おかしいな、気配は消してたはずなんだけど」
「馬鹿ね、そんなのすぐ解るってのよ」
そう、
と納得したように呟いて、くすりと笑みを零す。
その行動全てが私を苛立たせて、
それでいて、愛しい。
暗い夜道、
私たちを照らすのは月明かりと街灯だけ。
狂気の目覚めには、もってこい、よね。
「何の為に私をつけてたの?弱味でも握るためかしら?」
「ふふ…ふふふっ、まさか。そんなわけないよ、おかしなことを言うねうさみちゃん」
「なら、なによ?」