こばなし
□じとじと<シンタローside>
1ページ/1ページ
なんとなく、ほんとになんとなくそう思って、
「お前、雨に似てる。」
なんて言ってみたのに、そいつはものすごく幸せそうな顔して
「シンタローはん、わてのこと、嫌いじゃないでっしゃろ。」
なんてのたまいやがった。
「…ばっっっっかじゃねーの、眼魔砲くらう?」
くもった窓から視線をはずさずに右手をそいつにかざすと、左手を絡められた。
「雨は、好きどすよね?」
まぁ、雨『は』、嫌じゃないかもしれない。
音とか匂いとか。
あとは、
この、静かな、どことなくもったりとした時間の流れが、心地いい。
いつもせかせかして、はやくはやくと焦っているぶん、心地いい。
言葉を発すると、たちまちべしゃんと潰れてしまいそうな、そんな不安定な雰囲気が、安心感をもたらす。
そんなところばかり、知らずのうちに、アラシヤマと重ねていたことに気付いたら。
無性に、繋がれた手が熱いのとか、気になって。
アラシヤマを横目で盗み見ると、
アラシヤマが、じっと俺を見ていたことに気付いて。
「…お前は、大きらいだ」
「そうどすか」
心音がどくどくうるさいのとか、
頭がぼーっとするのとか、
顔が赤いのとか、
こいつの思い上がりにムカついたせいだ、
きっと、
ぜったい。