長編

□夜明け前
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「坂本さん、何者かがこちらに向かって来てます。」
「ん?敵か?」
おかしい…この先に居るのは金時の部隊だった筈だか

「あれは…見方です、坂田班の者です。」

何かあったな…後半刻足らずで奇襲をかける計画だ

「火急の用件の様だ、わしが話を聞いた方が早そうじゃ。」


ゼイゼイと息を切らせながら坂田班からの伝令役が陣地に駆け込んで来た

「さ、坂本さん…坂本さんに至急用件を伝えたい…」

そこに坂本が現れる
「どうしたがか?何かあったか?」

「はい、我が班の隊員が一人で敵艦に向かった模様、班長の坂田が急ぎ奴を連れ戻しに向かいました。
坂田からの伝言で坂田班の指揮を坂本班長に委ねろとの事
現在他の者達はその場で待機、この伝令は高杉班、桂班にも走っております。」


「そうか…あい判った。」
一刻の猶予も無い
咄嗟の判断は各班の責任者に委ねられている

一つ瞬きする間に沢山の決断を下していく

「これからわしは坂田班へ向かう、我が班は奇襲時間通りに天人の艦に向かってくれ、
わしは現地でおんしらと合流する。
その前に高杉かヅラの伝令が入るやもしれんきそれに従ってくれ。」

急ぎ身支度を整え自班の班員を二人ばかり同行させ
その後の段取りを走りながら伝えた


「まず、この先の最前線の坂田班状況だ
まだその場で待機しているだろう
奇襲時刻前に天人が攻めて来るかもしれん

そして…すでに斬り合いが始まってたら一人は自班に戻りもう一人は高杉、桂の元へ走れわしはそのまま銀時班に加勢する。」

「無茶ですよ坂本さん、いくら何でも多勢に無勢じゃないですか。」

「あははははっそうじゃな
だが、金時は必ず時刻迄に戻って来る。
そこは信頼出来る男じゃき。」


班員二人は『信頼してる相手の名前間違うか…?』
と不安を抱きつつも

この状況でも笑っていられる坂本と言う男の器の大きさに少しばかり安堵した

「じゃわしは先に金時を探しに行くぜよ。」

健足自慢の班員と全力疾走していた筈が
スッと加速を増した坂本にいつの間にか遠く離されてしまった


二人が坂田班へ到着した時には坂本から後から来る二人の伝言を聞き
定刻通り任務遂行に当たれと言い残し銀時を追ったとの事だった


森を越えたところで数人の天人に囲まれた銀時達を見付ける

奴等は見張り役か…

作戦決行時刻まで四半刻
敵の本陣がまだ動き出していない処を見ると
銀時達の事はまだ報告していない様だ


よし…いける


囲まれた銀時目掛け天人が次々飛び掛かる

鮮やかとは別の鬼気迫る…
まさに夜叉の如き剣さばきに瞬き一つ分魅せられる

流石、白夜叉とはよく言ったものだな



「金時!」
を掛け二人の元に駆け付ける
「金時無事じゃったか?」
「ああ…おっせーんだよ。」

「すまんすまんこれでも急いで来たきに。」

「分かってるよ、すまねえな。」

「ちょっと見惚れてな。」
「はぁっ?何言っちゃってんの?
馬鹿だろ、お前本物の馬鹿だろ。」

「礼なら後でたっぷり貰うきに。」

「てか、その前にこいつ等片付けるぞ。」

「おんしは怪我人を頼む、折角走って来たんじゃわしも一働きじゃ。」


「敵はまだ応援を呼んでいないらしい、一気にいくぜよ。」

敵の中に入っていく
異星人とは言え血の通う生き物を斬る

この思いがいつか澱となり、足枷になるだろう

だが今は迷ってはいられない

この国を守る為にな…






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