短編

□藪蛇
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「おおっ!!
陸奥ちっくとこの記事ば読んでみ、これは売れればヒット間違いなしじゃぁ!!」
陸奥の鼻先スレスレに一枚の紙を突き付ける

「近い!!」

陸奥を少しばかりイラッとさせる坂本の行動は日常の事
サングラスの奥の瞳は見えずとも無駄にキラッキラ輝いているだろう


資料には
『ペルセウス座付近にてナフタレン物質が認められた…』

一通り記事に目を通し坂本に視線を移す
「ナフタレンとはあの防虫剤に使われる物質の事か?」

一層身を乗り出し陸奥に向かって話し出した

「そうちや ナフタレンのお陰できっとあの辺りの宇宙空間には虫なんておらんのじゃ。」


「馬鹿か、宇宙空間の中に虫なんておる訳がない。」
興味無さ気に中断していた仕事を再開する

「解らんぞ、嫌気性生物は酸素を必要とせん。」

「それは虫じゃなか、細菌ぞ。」

坂本の方を見ず書き物をしながら答える
でなければ話を聞けとまた仕事を中断させられる

「なんでもえいき、この仕事が終わったらペルセウスまで一っ飛びじゃ。」

「馬鹿もじゃ、大方予想はつく。
キャバクラの贔屓のおなごに珍しい品だと言って土産に持って行きたいだけじゃろ。」

「なっ!? ち、違うぞわしはこの快援隊の頭としてカンパニーの資金になればと思って…」

「はいはい、そう言う事にしておく。
だが今は無理じゃ、すぐ次の仕事の予定も入っている。」

「えー!? そこをなんとかならんか?」

なんだこのしつこい食い下がり方は

「宇宙の匂いを放ちながら防虫作用も兼ねる物質ぞ?
これは当たると思わんか?
タンスにスペーシーゴンじゃ。」

「おんしらしい頭の悪いネーミング極まりないな。」


陸奥め、せーっかくおりょうちゃんに新しい帯と発売前の宇宙防虫剤とセットでプレゼントしたら喜んでくれると思っちょったのに…

「独り言のつもりか?
全部その締まりの無い口から漏れちょるき
…やっぱり飲み屋のおなごか。」

「あっ、やっ違っ」
「しばらく小型艇にての地球への抜け出し禁止じゃ。
セキュリティ強化しておく見つけたらただじゃ済まんき
覚悟しておけ。」


「あはははっ、あはははっ
冗談やき堪忍しとおせ。」
「こっちも冗談じゃない。
只でさえおんしが出掛けるとろくな事が起きん、大人しく仕事にかかってもらおう。
だいたい、頭であるおんしがちょくちょく艦を抜け出すなぞ…」

それから陸奥の小言を聞きながら

しもうた!藪蛇だった…

困まり顔を見せながらも辰馬は陸奥の小言を楽しんで聞いていた





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