その他

□そこにあるのは何も無いもの
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「……ん」


ジュリアが目を覚ますと、デヴィッドは横にいて無表情のまま車を走らせていた。

外はまだ暗く、時刻は四時を示していた。


「どうしたの?エンジン」
「雨が止んでからガソリンスタンドへ行った」
「何時に止んだの?」
「二時。君が寝てから直ぐだ」


デヴィッドの足元を見ると、ズボンや靴は泥で汚れていた。


「開いていたの?」
「……拝借した」


ジュリアは何も反論せず、ただ


「そう」


と言うだけだった。


「もうすぐ着く」
「そうね」


バスで帰る方が早かったわ、と言おうとしたが彼と口論をする力も残っていなかった。
さっさと風呂に入って、ベッドで寝たいという思いでいっぱいだった。







デヴィッドが車を停める。
ふたりは降りる。


「ありがとう」


何の感情も含まれていないような声でジュリアが言う。


「あぁ」


そしてデヴィッドも同じように返した。
それからすぐにふたりはそれぞれの部屋へと入って行った。




この頃のふたりは赤い盾の同僚として、馴れ合う事もせず、相手のことを知ろうともしなかった。
どんな感情さえも、ふたりの間にはなかった。

恋心なんて持つようになるのは、もう少し先の話。





fin...



09.04.26
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