サイボーグ009
□ジムノペディ
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何かが終わること
そしてその終わった何かは受け継がれることなく消えてゆくこと
生きてたことさえも
愛してたことさえも
叶わぬ何かがあったことさえも
悲しいけれど、
そうやって時は進んでゆく
ジムノペディ
午前二時。
時計の針の音と、しとしと降り続ける雨の音だけが私を包み込む。
もしこの音がなかったら、私は世界が死んだのだと思ったかもしれない。
私を満たすのには十分すぎるほどの音色にしばらく聴き入っていた。
旧式の電気ランプをそっと点ける。
世界は生暖かいオレンジ色に染められる。
窓を開けると、外は少しひんやりしていた。
悲しく、濃い雨のにおい。
いつ止むかもしれぬ雨音。
眠たいわけでも、眠たくないわけでもなく、かといって、本を読む気にもならない。
こんなとき、私はよくクラシックを聴く。
バレエの習慣からかもしれないけれど、クラシックを聴くと妙に心が落ち着くから。
ゆっくり、ゆっくり、曲が流れ出す。
私はランプを消し、目を閉じる。
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