サイボーグ009

□That's what I'm here for.
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That's what I'm here for.






「もし俺が空をとべてたら、」


俺には仲間を抱きしめることしかできなかった。

――大丈夫、きっと帰ってくる
そう言い宥めることしかできなかった。

――きっと帰ってくるから、信じろ
声も体も震えていた。

信じてほしかったんじゃなく、信じたかった。
仲間を慰めるんじゃなく、慰められたかった。
大丈夫だと、確信がほしかった。


「君を、助けに行ったのに」


誰かじゃなく、俺が。
じゃなきゃ、何のために俺は君のそばにいる?


「ごめん」


悔しくてたまらない。
俺が護るって言ったのに。
もう二度と離れないって約束したのに。
独りにするもんかって決めたのに。


「アルベルト」


ジョーは悲しそうに顔を歪ませる。
彼独特の表情で俺を見つめる。
愛おしくて、あどけなくて、悲しくて、切ない、彼独特の表情。

もしかしたら、もう二度とこの顔を見れなかったかもしれない。

胸が軋む。


「ただいま」


はっと見上げると、彼はゆるやかに笑っていた。

とても幸せそうに。

気づくと、俺はジョーを抱き締めていた。


「おかえり」


ジョーは耳元でくすりと笑う。

ジョーの温もりが俺の身体の隅々まで染み渡る。


「ただいま」


この声が、この顔が、この身体が、愛おしい。

もう離さない。
ずっと、ずっと。


「おかえり」






fin...



08.06.21

※title by 音速カラー

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