サイボーグ009

□星祭りの日
1ページ/2ページ




星祭りの日





 景色は緑ばかりであった。電車から降りると、むわりと熱気が漂っていた。頭上では早速セミが鳴いている。
 人は誰もいない。
 長閑な田園地帯を、ジョーは歩いていた。川は透き通っていて、太陽の光をキラキラと反射させている。そこに手を入れると、ひんやりと冷たい。


「何してるの?」


 浴衣を着た小さな子どもが数人、彼の周りへと駆け寄ってくる。それぞれ、その手にはアイスを握っている。


「暑かったからね、ちょっと涼んでいるんだ」


 突然やって来た彼らに驚きながらも、ジョーがはにかむ。来客が珍しいのか、子どもたちはジョーをじっと見つめていた。


「今日は何か、お祭りでもあるのかい?」
「七夕祭りだよ!」


 浴衣を指差して彼が訊くと、子どもたちが嬉しそうにきゃっきゃとはしゃぐ。


「ここではね、星祭りって言うんだ!」
「お兄ちゃんも願い事を書きなよ!」


 子どもたちにしてみれば、それはもう勧誘ではなく決定であったようで、ジョーは有無を言わさず背中を押された。


.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ