サイボーグ009
□星祭りの日
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星祭りの日
景色は緑ばかりであった。電車から降りると、むわりと熱気が漂っていた。頭上では早速セミが鳴いている。
人は誰もいない。
長閑な田園地帯を、ジョーは歩いていた。川は透き通っていて、太陽の光をキラキラと反射させている。そこに手を入れると、ひんやりと冷たい。
「何してるの?」
浴衣を着た小さな子どもが数人、彼の周りへと駆け寄ってくる。それぞれ、その手にはアイスを握っている。
「暑かったからね、ちょっと涼んでいるんだ」
突然やって来た彼らに驚きながらも、ジョーがはにかむ。来客が珍しいのか、子どもたちはジョーをじっと見つめていた。
「今日は何か、お祭りでもあるのかい?」
「七夕祭りだよ!」
浴衣を指差して彼が訊くと、子どもたちが嬉しそうにきゃっきゃとはしゃぐ。
「ここではね、星祭りって言うんだ!」
「お兄ちゃんも願い事を書きなよ!」
子どもたちにしてみれば、それはもう勧誘ではなく決定であったようで、ジョーは有無を言わさず背中を押された。
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