その他
□分岐点
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「つまんなーい」
ディーヴァが大きなあくびをする。彼女はクリーム色のソファーの上であぐらをかき、手を上にして伸びをしている。
「ちょっとォ、お行儀が悪いわよ?」
真向かいに座って紅茶を飲んでいるネイサンが仕方ない、とくすりと笑った。その顔を見て彼女はぶーと膨れっ面になった。
「暇なんだもんっ」
「そんなこと言われても、ねぇ?」
ディーヴァに見つめられたネイサンはアンシェルの方を向いた。彼はずっと青い薔薇を見ている。唯一手なずけることの出来る彼がこんなものでは、ディーヴァも機嫌を損ねるはずだ。
「アンシェルー!ひーまー!」
アンシェルは振り返る。穏やかにため息をついた。ツカツカとこちらにやって来て、彼女の髪に青い薔薇を刺す。そして手の甲にキスを落とした。
「我が儘な歌姫だ」
「ねぇアンシェル。小夜姉様のところに行きたいの」
「小夜のところに?」
えぇ、とディーヴァが笑うのと対照的にアンシェルは意外そうな顔をする。
「いいでしょう?」
ディーヴァは綺麗な笑顔を浮かべたままアンシェルの瞳を見つめる。そんな媚びの仕方を彼女は自然と身に付けてしまった。そしてそれに彼が弱いということも知っている。
「ネイサン、少し行ってくる」
「えぇ!?ディーヴァのレコーディングはどうするのォ?」
「帰ってきてからでいいでしょ?」
ディーヴァは普通の少女のようにきゃっきゃとはしゃいでいる。その笑顔はネイサンでさえも弱いのだ。
「もう……」
嬉しそうにぶんぶんと手を振るディーヴァ。ネイサンはヒラヒラと振り返す。
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