その他

□分岐点
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 車に乗り込むと、ディーヴァは陽気に鼻歌を歌い出した。窓には頭に青い薔薇を刺した自身が映っている。


「私ね、お姉様が私に会いに来てくれた時、とっても嬉しかったの」


 ミラー越しにアンシェルと目が合う。彼は無言のまま車を走らせる。


「私の声を綺麗だと言って、名前までくれたわ。私にとってお姉様は太陽なの」


 ディーヴァはうっとりと微笑む。空では太陽が雲に呑み込まれそうになっている。


「だからお姉様の周りの人間が憎い。お姉様と私を離した人間が憎い。私だけのお姉様なのに」


 青く燃ゆる瞳は、まるで月のよう。冷たく光るそれは窓の外の太陽を捉える。


「私の夢はね、お姉様と私の世界をつくること。またふたり一緒に楽しく過ごすの」


 次はにっこりと、アンシェルに微笑みかける。アンシェルもそれに応えるように微笑む。


「えぇディーヴァ。全ては、あなたのために」




ねぇ、お姉様?
もう一度、私と一緒に生きましょう。
あの頃のように、ふたりでいつまでも。
誰にも邪魔されない場所で。
ふたりだけの秘密を背負って。
貴女が剣を振るうのは惑乱しているから。
貴女が私を憎むのは忘れているから。
ねぇ、そうなのよね?




彼女は知らない。彼は知っていた。
それはあの時からもう戻ることなどないということ。彼女たちが別々の目的で育てられたあの時から、もう全てが壊れていたこと。

あれが、全ての終わりで全ての始まり。






fin...



09.05.17

(リク小説)
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