その他

□宇宙理論哲学
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真っ暗だ。
真っ暗で、何もない。
感覚が闇に支配されているみたいだ。

息は、できる。
だけど確かなのはそれだけで、それ以外は何もない。


「怖いか?」


アイツは問う。


「独りは、怖いか?」
「そんなワケ……」
「じゃあお前は何を恐れる?」


心臓の音がカラダ全身に響き渡る。
俺は足掻く。
耳を塞ぐ。


「お前は宇宙で生きて、宇宙で死ぬ」


それでもアイツは続ける。
俺は答えられずに、竦むだけだ。


「この広すぎる宇宙で!たった独りで!」


心臓が押し潰されそうだった。
アイツがそこにいるのに、誰もいなくて。
誰も、助けてくれなくて。
手を伸ばせば届きそうなのに、伸ばすと遥か遠くに行ってしまいそうで。

そんな時、耳をつんざくような音がした。
目の前には光があって、そこから声が響いて来るんだ。


『こんなところで、たった独りで死んじゃダメです』


すぐに誰だかわかる。
きれい事ばかり並べやがるんだ。


『独りじゃ……愛がなきゃ、生きていけません』


そんな御託を繰り返す。

真っ暗な闇は光に包まれて、真っ白になる。
それは温かく、だけど俺にとっては生ぬるい。


「ふざけんな!俺は宇宙船員だ!ここで生きて死ぬんだ!」
「なら、どうしてお前は光を求めた?」


光の終点からアイツが現れる。
俺と同じ顔をして、宇宙服を着たアイツ。

――確かにそうだ

俺はさっき、闇の中で光を求めた。
求めて、もがいて、手に入れて、拒絶した。


「本当は分かっているんだろう?」


光はどんどん闇に覆われる。
待ってくれと言おうにも、あまりに闇が強すぎたんだ。


「独りじゃ、生きていけない。この宇宙は果てがないからな」


アイツがそう言うと、ぷつりと世界はなくなった。

闇も、光も。
残されたのは混沌とした宇宙だった。

――あぁ、広い

手を伸ばしても、何も掴めない。


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