その他
□This Love
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重ねたこの手を
今度は離さない
This Love
アメリカの空は今日もひどく曇っている。
「明日も曇り、か」
デヴィッドは天気予報を見て、ため息をついた。最近必ずデヴィッドは一日に二回、天気予報を確認する。
まるでイギリス人みたいだ、と言うと「俺はアメリカ人だ」とでも言いたげに面白くなさそうに――デヴィッドに面白い、だとかそんな感情はあるのかはわからないが――ぷつんとテレビを消してしまった。
「何か予定でもあるのか?」
ピザを頬張りながら、キッチンからルイスが顔を出す。相変わらずコイツはピザが好きだなぁ、なんてぼんやり思った。
「いや、私ではなく――」
「小夜がね、」
突然、ジュリアが小夜のいる部屋から出てきた。また輸血をしたのだろうか、白衣を着てカルテを持っている。
「天気が悪かったら、小夜の状態があまり良くないみたいなの」
そう言い、ジュリアは静かに椅子に座った。デヴィッドがジュリアの方を振り向く。
「やはり、何か関係があるのか?」
「わからないわ。単に気分の問題かもしれないし」
「今、小夜は?」
俺が訊くと、ジュリアはひどく優しい顔で笑った。
「大丈夫。静かに寝ているわ。ハジもずっと側についてる」
「そっか……」
ハジ、という言葉に少しムッとした。……けど、大丈夫。あいつなら大丈夫だ。そう言いきかせて俺もジュリアに笑顔を返す。するとジュリアは、またひどく優しい顔で笑った。
多分、ジュリアは気付いているんだと思う。こういうことは、女の人の勘が鋭い、って親父が昔言ってた。
あれから小夜は俺を拒絶するようになった。傷つけたくない、とかそんなくだらない理由なんだと思う。
アイツはいつもそうだ。いつもひとりで背負ってしまう。ひとりか、それか、ハジと。ハジの事を信用していないわけじゃない。ただ、俺も頼って欲しいって思う。だって、たったひとりの、大切な――
「なーに辛気くさい顔してんだよ!ほら、飯だ!」
キッチンからルイスが出てきて、俺にデコピンをした。楽しそうにケラケラと笑っている。
「――ってェ!って、また今日もピザかよ!」
「ピザは旨いぜ?ただ、残念なことに、七切れしかないんだ」
「お前、さっき食ってただろ?」
「甘いなー、試食は数に入ってないんだよなー」
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