その他
□This Love
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夜になっても相変わらず外は曇っているようで、月は出ていない。少し肌寒い風が部屋に入ってくる。
「小夜はまだ寝てるのか?」
ルイスはもう夕飯の片付けをすっかり済ましていた。デヴィッドはコーヒーを飲みながら何かの書類を見ていた。
「どうでしょうね」
同じようにコーヒーを飲んでいたジュリアはパソコンの画面から顔をあげる。夕飯のピザを持ったまま、ルイスが小夜の部屋の方を見た。
「腹、減ってないかな。ピザの余りがあるんだけど」
時刻はもう11時を過ぎている。そういえば今日は朝から一度も小夜を見ていない。いくら疲れているからって、アイツが飯を食わないのは心配だ。
「俺、見てこようか?」
「ちょっと、いいか?」
トントンと扉をノックする。向こうからは返事が無い。まさか、まだ寝ているのかと思い、ガチャリと扉を開けた。
「何?出てって」
闇の中で小夜の赤い瞳が、ぎろりとこちらを向いている。静かに燃える赤い瞳は、俺の知っている小夜のものでは無い。
「小……」
「出てって!ハジ……っ」
小夜はハジを見つめた。ハジは無表情で頷き
「すみません」
そう言って、扉をバタンと閉じた。
この目の前の扉をぶち破ることぐらい簡単だった。だけど、そんなことすら出来ない。俺と小夜の距離は、ひどく遠いもののように感じた。
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