頂き物 小説
□君にキス。
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仕方…ねぇだろ…
拳をギュッと握り、思い切り壁に叩きつける…
鋼の義手がコンクリートの壁を砕き、表面がパラパラと崩れ落ちる…
『エドワードさん…』
いつも…どこでもこんなオレの側にいて、微笑んでくれるアイツ…
オレとはまた違う毛質の柔らかそうな金髪…
この澄みきった青空を思い起こさせる碧眼…
日だまりのように柔らかく温かい笑顔…
その髪をこの手ですき…
その瞳にいつもオレを映して…
その優しい笑顔を独占できたなら…
いつから…いつからオレはアイツをただの幼なじみではなく、邪な目で見るようになった…
男を好きになるなんて、本当にどうかしてる…
勘違いだ、一時期の気の迷いだと必死にこの気持ちを否定しようとしたが…
オレの歪んだ情は年々酷くなるばかり…
『ハァ…ハァ…あっ…く…アルフォンス…っ!///』
気がつくと彼を想い夜な夜な自身を慰めている自分…
どんなにエロい本やDVDを見ても…
どんないい女に告白されても、オレ自身は反応することさえない…
オレは…アイツでないと…!
自分で自分が怖くなった…
高校に入って何とかアイツと距離を置き、避けようとしてきたが、無駄だった…
風紀委員会に入ったアイツは、オレがグレたと思い込みことあるごとに構い、更正させようとした…
アイツを遠ざけるためのタバコも、着崩した制服も、サボった授業も…
全部無駄だと思われた…
だけど…
『あなたには幻滅しました』
今こうして…オレの望み通り、アイツは離れていった…
よかったじゃないか…
これで、オレのこのおかしな妄想も消えてくれるに違いない…
アイツと距離を置けば…きっと…!
なのに…
なのに…
「くっ…ふ…っ!」
なんで…こんなに涙が止まらねぇんだ…!
オレは止めどなく流れ落ちる涙を拭うこともせずに、その場に立ち尽くす…
夕暮れ迫る学校の屋上で、冷たい風が情けないオレに容赦なく吹き付ける…
本当は…
本当は…
嬉しかった…んだ…
アイツが、こんなになったオレでも構ってくれるのが…
『エドワードさんはすごいです!
またテスト満点だったんですか…!
僕また負けちゃいました…はぁ』