パラレル

□Geburtstag
1ページ/20ページ



高校の入学式で僕はある女性にひとめで心を奪われた

彼女は学園でもとても有名らしく名前や性格などは調べなくてもすぐに解った

成績は常に学年トップ....それどころか教師をも唸らせる程の頭脳の持ち主

そして運動神経も抜群でとても気さくな性格らしく友人も多い

どこにいても目を引く存在で彼女の回りは常に活気づいていた

そしていつ見ても太陽のような笑顔を振りまいている

そんな彼女を見る度にあの人に少しでも近づきたいと思っていた

しかし運動神経は抜群だし頭脳も明晰なのにどこの部活にも所属していないらしい

そんな彼女と学年がひとつ下の僕とではお近づきになれる機会なんてなかった

学園中の注目の的な彼女と特に目立つところのない僕

接点なんてひとつも無かった

だから僕は思っていたのだ

見つめていられるだけで幸せだと....



僕が2年生になった時彼女が生徒会長に立候補するという噂を耳にした

あれだけ皆に慕われている彼女ならきっと満場一致で当選だと思った

そんな彼女を補佐出来る立場になれたらどんなに良いだろうか

無理だとは解っていた

この学園の生徒会は皆の憧れのポジションだし全校生徒の8割の支持が無いと当選出来ない

僕は目立つことは苦手だし皆を引っ張っていく技量も無い

けれどもし立候補すれば彼女と少しでも話が出来るかもしれない

そう思い駄目元で副会長に立候補してみたら何故か当選してしまった

「2年生で副会長に選ばれるなんてすげぇじゃん!」

初めて彼女にかけられた言葉

その言葉は太陽のような笑顔と共に僕に贈られた



それから半年彼女の右腕として副会長を勤めその後彼女の跡を継いで生徒会長も務めた

生徒会長として彼女の卒業式を無事終えて僕は彼女を捜していた

ずっと彼女を見つめてきた....彼女だけを見つめてきた

遠くから見つめていた笑顔が生徒会に入ったことによって少しだけ身近なものになった

甘い空気なんて1度もなかったけれどそれでも彼女はいつも僕に笑いかけてくれた

生徒会が終わっても声をかけてくれた

仲の良い後輩くらいには多分なれていると思う

でもこのまま終わりたくなかった

僕はただ気持ちを伝えたいだけだった

恋人同士になりたい訳ではなかった



「エドワードさん!」

彼女の後ろ姿を見つけて声をかけるとゆっくりとこちらを振り返ってくれる

横にいた友人に何かを伝えてこちらに駆け寄ってくれた

「アルフォンス」

太陽のような笑顔....多分今日で見納め

「卒業おめでとうございます」

「おうありがと」

どうせもう会えないのだから気持ちだけ伝えたい

「エドワードさん僕はあなたのことが好きです」

自然と口から滑り落ちた言葉

彼女の目が見開かれてそして....

次の言葉を聞きたくなくてこれ以上見ていられなくてぎゅっと目を閉じた

しかし彼女からは予想だにしない返事が返ってきた

「おう!俺も好きだぜ!」

その言葉に驚いて目を開くと満面の笑みを向けてくれていた

しかし僕は頭が真っ白になってぽかんとしてしまう

「おい!アルフォンス!」

声をかけられて我に返ると彼女の綺麗な顔がすぐ傍にあった

僕は驚いてそこに尻餅を付いてしまう

「おっおいアルフォンス大丈夫か?」

彼女は僕を見下ろし手を差し伸べてくれる

僕はまだ頭の整理がつかなくてその手をじっと見つめてしまう

すると彼女が僕の手をとって引き上げてくれた

いきなりだったので勢い余って彼女に抱きついてしまう

「おっアルフォンス積極的だな」

「えっ?あっちっ違います!」

彼女の声が聞こえて動揺しながら見下ろすとにっこりと笑ってくれている

「ありがとうアルフォンス!」

「え?」

「好きって言葉嬉しかった」

にっこり笑った彼女が僕の抱擁から逃れて手を取って握手をしてくれた

「これからもよろしくなアルフォンス」

思っていたよりも小さくて柔らかい手をそっと握る

この手を2度と離したくないと思った

こうして僕たちは意外にも恋人同士になってしまったのだった



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ