パロディ

□未熟
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握りあった手に力が篭もる

「僕はあなたのことを女性として愛しているんです」

言葉の意味をしっかり咀嚼する

俺はしたつもりだった

「それって俺とセックスしたいってこと?」

俺の発言に同居人は顔を真っ赤にする

それをめちゃくちゃ可愛い反応だなと思う俺

じっと見つめていると冷静になったのか解らないが盛大なため息が零れた

「もう良いです」

繋いでいた手が離れて同居人は一歩退いた

「何が?」

「僕の思いは一生届かないって解ったのでいいです」

「何で?」

「だって現に今一切伝わってないじゃないですか?」

「なんでだよセックスしたいってことじゃないのか?」

「違います!」

「じゃあしたくないのか?」

「僕は心を繋げたいんです」

俺を見つめる目が切なげに揺らめく

「僕はあなたの心が欲しいんです」

さっきからずっと泣きそうな同居人

泣かせたくない

頭を撫でてやりたくて手を伸ばすと払われた

「心のないセックスなんて....意味はないでしょう」

「よく解らないけど俺は良いよ」

想像してみて即答出来た

俺を見る目は信じられないという目

「それって誰とでも出来るってことですか?」

少し考えてみる

俺の周りにいる男とすることを想像

そいつらの目を見つめて顔を近づけて....

そこまで考えてすぐに身震いがした

「....アルフォンス以外無理だな」

同居人以外の男には唇を寄せることも無理だ

そんなこと初めて考えてみたが

「俺にとってアルフォンスって特別なんだな」

新しい発見だなと思っていたら力一杯抱き締められた

身体が震えていて多分泣いている

背に腕を回してぽんぽんとあやすように軽く叩いてみる

「なんだ?セックスするか?」

「エドワードさんのばか」

ばかとはなんだと思ったけれど声が嬉しそうだから許そう

苦しいくらい抱き締められて嬉しいけれどちょっと辛い

苦しいと言うと抱擁が緩んで顔を見るとやっぱり泣いていた

涙を拭うとその手を取られる

掌にくちづけられてなんだか気恥ずかしかった

「キスしても良いですか」

確認されるとなんだか恥ずかしい

しかも心臓が高鳴り始めた

顔が近づいてきて目を閉じると触れるぬくもり

すぐに離れて吐息が唇を擽る

少し冷たい指が触れてなんだと言おうと思ったら唇が重なってまた強く抱き締められる

くちゅりと音がして舌が絡まる

なんだろうとても居たたまれなくなってきた

角度を変えて唾液が互いを行き来する

想像すると不快なのにでも不快じゃない

それどころかもっと欲しいと思ってしまう

首に腕を回して引き寄せる

もっともっと欲しい

どれくらいそうしていたか解らないけれど離れた唇から銀糸が伝う

それを同居人がそっと拭う

何なんだこれ?欲しいって何を?

見上げると嬉しそうな同居人の顔

胸がきゅうっとなる

この表情独り占めしたい

嗚呼これが

「恋愛感情ってやつなのか?」

俺の言葉にきょとんとした顔

この顔も凄く独り占めした

「俺もおまえのこと愛してるみたい」

そう言ったら凄く嬉しそうな顔をしてくれてその顔も独り占めしたいと思った



次ページはあとがきとなっております



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