D灰


□記憶
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「ラビ」



誰かに呼ばれた


…気がした


きょろきょろと辺りを見渡しても、誰もいない

気のせいか、と再び手元の本に目を落とす
…読み始めたときと、同じページだった



書庫に来てから2時間、これを読み始めてから1時間50分も経っていたのに、だ



珍しい、と自らを笑う



いつもなら1時間あれば1冊くらいは読めていた




…気にしてんのか?


「ラビ!」


…再び、誰かがオレを呼んだ



さっきより強みが増した声
もう一度見渡すと


本の山の向こうに、微かに白髪が見えた


「…アレン…?」



「よかった。気付きましたか」


「ゴメンさ…何時からいた?」


「ついさっき来たばかりです」


「そっかぁ、…で…なんか本でも探しにきたんか?」



「…その」


急に、アレンの言葉が詰まった



「…えっと…、ラビを…探してたんです」




「…何故?」


少し冷たい言い方


「今のオレの状況、知らないわけじゃないだろ?」



突き放したような言い方
それを聞いてアレンは俯いてしまった



…ゴメンな、アレン



「…ラビは…」


アレンが小さな声で何かを呟いた


「ラビは…僕の、仲間です」


「…嘘でも、嬉しいさ」


オレがそう言うと、アレンは何か言いたげな顔をして、オレを見た



「アレンはさ、この戦争、どう思う?」



「どうって…その、」



言いにくいだろうな


オレみたいになるかもしれないから


それを知ってて聞くオレも、意地悪だけど




「…伯爵は、倒さなければいけない。アクマも人も救いたい…僕は、そう思います」



「…お前らしいさ。…アレン」



「はい?」




お前に辛い思いをさせるかもしれない
でも、伝えさせてくれ





「…オレな…」





もうすぐ、ここから出ていくんさ


 







 
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