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□バースデーがのしかかる
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この仕草は、オヤジ臭いなーと自分でも思う。
思うが気持ちいいので、よしとする。
カカシは軽く口を湿らせ、じっとイルカを見ている。
それは多分、料理をどう評価されるのかが気になるのだろうな、と感じたイルカは箸をとった。
焼きたてのイサキを解し、一口。
「うまい……。おいしいです、カカシさん!」
海老しんじょの椀物、田楽の焼き豆腐や山芋の焼き物、炊き合わせの野菜。
それに、朝に持たされた弁当も。
家庭よりは料亭に近いのだが、どれも絶妙にイルカの舌を喜ばせた。
嬉しそうに料理を口に運ぶイルカに、カカシは嬉しそうに目を細め見つめている。
「カカシさん」
だいぶ食事のすすんだところで、イルカは姿勢を正した。
「今日は一日、ありがとうございました! オレ、嬉しいです」
何故、カカシがイルカの誕生日を知っていて、こういう祝い方に出たのかは謎のままだったし、カカシの格好さえなければ、だが。
それでも、こうして誰かに祝われるのは、嬉しかった。
「ありがとうございます」
深々と頭を下げるイルカに、カカシはふふっと優しく笑いかける。
「やだなあ、イルカ先生。大げさですよ」
頭、あげてください。
「ここまでやったら迷惑かなっても思ったんですけど。でもね、オレ自身がしてあげられることを、したかったんです」
カカシの言葉に感動し、うっすらと涙まで滲んできたイルカは思い切って顔を上げた。
うっかり泣いてしまうかもしれない。
「カカシさん……」
しかし、カカシの顔に人の悪い笑みが浮かんでいることにようやくイルカは気付く。
「カカシ、さん?……」
「それにね、イルカ先生。今日はまだ、終わりじゃありませーんよ」
一瞬後、木ノ葉の里にとある男の悲鳴が轟いたのであった……。
【了】
WRITE:2005/05/25
UP DATE:2005/05/28(PC)
2009/05/26(mobile)