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□バースデーがのしかかる
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バースデーがのしかかる
【忍具編】
僕の帰る、君の手に



「お誕生日、おめでとうございます」

 そういってカカシが差し出したのは、1対のクナイだった。
 なんの変哲もないようで、よく見れば握りに同じ糸が縫いこまれている。
 それは握っている間は決して見えないけれど、よく観察すれば何らかの法則性を持っていることが分かる。

「これは?」

 1つを手に取り、イルカはよく検分してみる。
 いい品だと、一目で分かるほどの業物。
 きっと、普通ならばクナイなど打たない者へ無理を言ったのだ。
 そして握りに縫いこまれた糸の意味に、眉をしかめる。

「カカシさん」

 1対2本のクナイを並べると、黒い糸と白い糸は2人の名を暗号で示すのだ。

「こういうことは、後々面倒を起こしますよ?」

「それは分かってます。でも……」

 でも、とカカシは口ごもる。
 膝の上で強く握られたその手に、イルカは自分の手を重ねた。

「それもこれも覚悟の上で、ですね」

 そう鮮やかに笑ってやれば、カカシも頷く。
 
「ええ。もちろんです」

「それにしたって。オレには贅沢な品ですよ」

 こんなのもったいなくって、いざって時に使えません。

「それじゃ、困ります!」

 冗談めかしてイルカがいうのに、やけにマジメな声をカカシは上げた。

「オレは絶対、あなたのところに帰ってきます。だから、これは、オレがいない間、あなたを守るためのものなんです」

 
【了】

WRITE:2005/05/10
UP DATE:2005/06/01(PC)
   2009/05/26(mobile)

 
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