Happily Ever After

□Saint School Life
31ページ/46ページ

[6-2]
UP DATE:2023/12/11
write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

 何故そんな事を、と訝しげな邪武へ一輝は懸念を口にする。

「そうか。もしかしたら同じメニューを希望されても用意がないと面倒になる。念のため、明日の昼飯が必要かどうかは確認してくれ。朝食まででいい」

「分かった。辰巳に聞いておく」

「頼むぞ」

 これで気になった事は片付いたのか、一輝はカニ(仮)と共に厨房へ向かった。
どうやらテスト勉強は一区切り付いていたらしい。

 一方、彼の去った勉強室からは「明日はオムライスだー!」と盛り上がる兄弟たちの声が上がる。
多分、彼らの殆どはまだ目処はついていなさそうではあるが。

「……オムライスとは、なんだ?」

 そして、メニューの謎が明かされず、ロシア生まれは置いてけぼりだ。



 
★ ☆ ★ ☆ ★




 翌朝。
朝食後に厨房で下拵えとして米の浸水をした一輝とカニ(仮)は荷物持ちに瞬を連れ、城戸家お抱え運転手により車で最寄りの大型スーパーへ買い出しへ出かけていった。
しばらくして大量の買い物袋を下げて帰宅するや、真っ直ぐに厨房へ向かう。

 その途中、精神的長兄を捕まえて何やらおねだりをした末っ子はご機嫌な鼻歌混じりに居間へ入って行った。

「♪オッムラ〜イスッ、オッムライス〜ゥ〜きょっお〜は、おいしーぃオムライス〜」

「星矢、僕より楽しみにしてるね」

 荷物持ちの役目を果たして一緒に家族用の居間へやってきた瞬は呆れる様子もなく、微笑ましそうにしている。
むしろ大好きな兄の手料理に、誰よりもテンション上がっていそうなのだが。

「あったり前だろ! 施設とかじゃ絶対出てこないじゃん、オムライス!」

「まあ、1人分ずつしか作れないからねえ」

 家庭ならともかく、大人数の子供を預かる施設での提供は少し工夫が必要な料理である。
だからこそ、施設育ちの彼ら兄弟には憧れのメニューだ。

「瞬はいいよなー。なんでもできるにぃちゃんがずっと一緒でさー」

「それは僕も兄さんに感謝してるよ。だけど星矢にだって、すごく素敵なお姉さんがいるじゃない」

「そりゃあ、そーなんだけどさー」

 互いの実兄と実姉を褒め合いながら居間の一角に設けられたカウンターからそれぞれで飲み物を用意し、日当たりの良いソファを陣取る。

 先に窓辺に置かれた1人用のソファで新聞に目を通していた居候の1人、サガはご機嫌な彼らの様子に昨日から抱えていた疑問を投げかけてきた。

「あー、すまない。君たちが楽しみにしているオムライスとは、一体どんな料理なのだ?」

「元々はオムレツライスって呼ばれてたらしいんですけど、要は中身がチキンライスのオムレツ、ですかねえ」

 瞬の説明でなんとなくの想像はつくが、やはりサガには未知の料理である。
一方で星矢はとても不思議そうに尋ね返した。

「え、サガ、オムライス知らねえの? もしかして、ギリシャにない?」

「私は初耳だし、料理に詳しいデt……カニ(仮)も知らなかったくらいだからね」

 どうやら洋食は全て海外から伝わった料理、という認識が星矢にはあるらしい。
昨日もナポリタンをナポリ発祥のスパゲッティと主張していたが、ナポリタンは正真正銘日本で発生した魔改造スパゲッティである。
イタリアのナポリには実在しない。

「確か日本発祥の洋食で、明治から昭和にかけて伝わってきた西洋料理をアレンジした日本独特の料理の一つだって兄さんは言ってました」

「ほう」

「へえー」

 それ故に、瞬による一輝からの受け売りにサガと星矢は揃って感心した。

 本当に一輝はなんでも良く知っているし、勉強もできて仕事の覚えも早く、家事も使用人に任せ切りにせずに自分で殆ど済ませていると聞く。
聖闘士としても強者であるし、出来ない事がない、と末っ子組や居候らには思われているかもしれない。

 そんな思い込みを助長するように、瞬が一輝との思い出を語りだす。

「僕が最初に食べたいって言った時に色々調べて、子供でも作れるやり方を探して作ってくれたのは本当に嬉しかったんだ」

 瞬の記憶では兄もまだ5歳ぐらいで、台所に立って重いフライパンを振ってオムライスを仕上げるには少し体格が足りなかった。
 
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ