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□季節のカカイル
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季夏のおはなし
 
かみさま



 さっきまで晴れわたっていた夏空は、もう暗雲に覆い尽くされている。

 遠くから雷鳴が響いて、それは急速に近付いていた。

 視界の端に閃く雷光と、轟いてくる雷鳴の間隔は測らなくとも狭まっている。


「急ぎまショ」


 差し出した手が、躊躇なく包まれる。

 その暖かさに浸っていると、ぐいと引かれた。


「急ぐんでしょう?」


 悪戯っぽく笑って前を走るは、楽しそうに髪を揺らしている。


───雷は神成り、神様のいらっしゃる音って言われてるんだよ


 ふいに、思い出したのは、誰が言った言葉だったろうか。

 こんな人を、神様に見せてはいけない。

 きっと、連れて行かれてしまう。

 握った手を強くし、足を速めた。

 
 
【了】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2005/07/08
UP DATE:2005/07/14(PC)
   2009/01/27(mobile)
 
 
季節のカカイル

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