拍手倉庫

□季節のカカイル
16ページ/21ページ



夏のおはなし
 
夕日に向かって



「夕日に向かって走ったこと、あるんですか?」

 ふとした会話から、妙な方向へ流れていた。

 最初は、この夏は海にでも行きたいと言ったんだとおもう。

 それで気恥ずかしさを誤魔化すように、海辺でも走りますかと返ってきた。


「青春ですね」


「やめてくださいっ。濃ゆいモン、思い出しますからっ」


 なんて、どんどん色気のない会話になってったんだ。


「ガイ先生なら、夕日に向かって走っても、追いつきそうですよね」


「はあ」


 気のない返事をしてしまうのは仕方がない。

 でも、ガイなら、というところが気になった。


「夕日に向かって走ったこと、あるんですか?」


「ええ……子供の頃に」


 小さな子供が夕日に向かって走る。

 まるで、夜から逃げるように。

 そんな光景が見えた気がして胸が痛んだ。

 淋しい顔が見たくなくってきつく抱きしめる。

 
 
【了】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2005/07/08
UP DATE:2005/07/14(PC)
   2009/01/27(mobile)
 
 
季節のカカイル

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ