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□季節のカカイル
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秋のおはなし
立ち上る煙
里のあちこちで煙が上がっている。
理由は分かっているとはいえ、なんとなく不安な気持ちになるのはどうしようもない。
カカシは足早に通りを抜け、報告所へと向かった。
受付のカウンターに馴染みの顔がないことを淋しく思いながら、手早く報告書に記入を済ませて提出する。
係の者が内容を確認する間、窓の外を見ればそこにも立ち上る煙が見えた。
「気になりますか?」
手の空いた係がカカシに話し掛けてくる。
「外から戻った方は皆さん、気にされるんですよ」
「だろうねえ」
まだ窓から視線を逸らさずに、カカシは応えた。
近付いてくる足音を察し、どこか口元が微笑んでいるようにみえる。
「はい、内容確認しました。あとの処理はこちらでしておきます」
「そ。じゃ、よろしく〜っと」
「すまんっ、遅くなったっ!」
片手を上げて出口へと向かいかけたカカシと鉢合わせるように、飛び込んでくるのはイルカ。
「おや、イルカ先生。なんか、おいしそうな匂いさせてますねえ」
カカシの言葉に眉をしかめるイルカは、腕に暖かな湯気を立てる焼き芋を抱えていた。
「今日はアカデミー総出で里の落ち葉清掃なんですよ。毎年恒例で、そのまま焼き芋大会になっちゃってますが……」
「なるほど。あの煙は、それでしたか」
まだカカシの胸は騒ぐけれど、窓の外で幾筋も立ち上る煙は里が平和な証なのだ。
【了】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2005/10/23
UP DATE:2005/10/23(PC)
2009/01/27(mobile)