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□ボクの先生はヒーロー
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僕の先生はヒーロー
 
19 謳われる者



 火影の執務室からは里の全景が見渡せる。

 いつもならば、平和な里の様子を確認し、3代目火影は嬉しげに目を細めているはずだった。

 だが今、眼前に広がるのは信じたくない光景。

 巨大な異形の獣が里と忍びを蹂躙していく様。

 窓外の出来事に成す術もなく、老いた手が煙管を握り締めていた。

「3代目……」

 気遣わしげに傍らから同じく里の様子を見ていたイルカが声をかける。

 その心情が分かるだけに、3代目も深く息を吐いた。

「分かっておるわ……」

 かつては教授〈プロフェッサー〉と呼ばれ、最強の火影とまで謳われた3代目だが、人は老いるもの。

 もはや以前のようには動けないのが現状だ。

 しかも相手は若き4代目火影が命を賭して封じた九尾に準じるもの。

 今の3代目が出て行って、果たして倒すことができるのものか。

 誰よりも自身のことが分かるだけに、3代目火影は1人、耐えねばならなかった。
 
 家族と公言してはばからぬ里の人々が倒れていくのを目の当たりにしながら。

「火影様、私も出ます」

 戦えぬ里の人々や子供たちの退避が完了したという知らせが届き、イルカはここで自身がすべきことはないと悟ってそう告げた。

 命令を下す立場にありながら、3代目には彼を止める権限はない。

 今は誰もが里のために戦っている状況だ。

「そうか」

 けれど、彼の生い立ちを知り、健やかな成長を見守ってきた老人には明らかな了承もできなかった。

 ただ確認のように頷き、案じる心情を吐露することしかできない。

「気をつけよ。無理だけはするでないぞ、イルカ……」

「はい」

 あとはよろしくお願いします。

 そんな言葉を残し、イルカは執務室から姿を消した。

 
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2006/03/30
UP DATE:2006/07/13(PC)
   2008/12/07(mobile)
 
 
ボクの先生はヒーロー

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