拍手倉庫

□ボクの先生はヒーロー
9ページ/42ページ



僕の先生はヒーロー
 
8 光る声



「なるほどなあ……」

「アスマ」

 あごヒゲをさすりながら室内を見渡す担当上忍師へシカマルが示した先には緩やかな筆致で『禁煙』とある。

「あー。分かってる」

 タバコは咥えているだけで火はついていないと見せ、アスマは背後を振り返った。

「で? 今朝まではなんともなかった、と?」

「ああ。朝一で見回った時はなんともなかったんだがな、研究員が来た時にゃこの有様だ」

 在庫表を片手に説明をするのはシカマルの父で上忍、奈良家の研究所の責任者であるシカク。

 研究所に保管されている膨大で乱雑な資料や薬剤の全てを把握できているのは彼1人だ。

「空白は数分ってとこだな」

「そか……」

 僅かな空白に持ち去られた物とその残骸たる荒らされた研究室を見渡し、アスマはため息しかでてこない。

「……ったく、一体どこの誰だよ。こんな面倒臭えことしやがったのは」

 呟いた時だった。

「きゃあっ!」
 
 物珍しげに薬箪笥の迷路を見回っていたいのの叫び声。

 今時の女の子らしいかしましさもあるが、気丈で下忍としても優秀なくのいちであるいのだ。

 めったなことでは叫び声などあげない。

 すぐにアスマ、シカク、シカマルが彼女の側に駆けつけ、少し遅れてチョウジもやってくる。

「どしたぁ、いの」

「なんか話し声がするから、覗いてみたら急に光ったのよ!」

「話し声ぇ?」

 いのの示す暗がりをアスマとシカクが確認するが、そこに誰かがいたような痕跡はまったく見当たらない。

「いの」

「な、なによぉ! 嘘言ってなんになるのよ、こんな時にぃ!」

「そーじゃねえ。話の内容、聞き取れたか?」

 
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2005/11/28
UP DATE:2005/12/22(PC)
   2008/12/05(mobile)
 
 
ボクの先生はヒーロー

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ