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□クリスマスまで待って
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クリスマスまで待って
【4‐3】 木ノ葉学園のクリスマス・ツリーには伝説があった。
25日の朝、クリスマス・ツリーのオーナメントに手紙を結んでおくと、サンタクロースが届けてくれる。
実際は、純情な想いを託したのを見つけた誰かの粋な行動が始まりだったのだろう。
いつしか、見つけた教師や生徒が届ける暗黙の了解が生まれ、今日まで続いている。
それに、帯人は賭けたのだ。
カカシからイルカ宛てのラブレター。
それをイルカ自身か、彼を庇護する誰かに見つけさせる。
普通に考えれば、もみ消されるのは火を見るより明らか。
だが、伝説という暗黙の了解を踏みにじるようなことをイルカはしないだろうし、許さないはずだ。
それを自分より承知している保護者会の面々が、軽蔑されるような行動に出られるのか。
果たして、帯人の読み通りに今、不運にもソレを見つけてしまった疾風は苦悩に苛まれていた。
既にイルカにもアレは見られている。
もはや抹消することも無視することもできない。
本人以外には、イルカ宛てだと分かるのだし。
どう対応すべきか。
誰かに相談する猶予は、ない。
「どうかした、疾風?」
「イルカ」
ぬいぐるみから目を離せないまま、疾風は迷っていた。
あのカードとぬいぐるみが誰から誰宛てかなんて、この数日の騒動で分かりきっている。
ただ、カカシを知らなかったイルカのことだから、十中八九、伝説も知らないと見ていい。
ならば、惚けていまえばいいのだ。
伝説を後日知っても、アレが自分宛てと気付かせなければ問題ない。
「クリスマス・ツリーにカードを託すなんて、誰に」
「イルカ宛てだな☆」
疾風が、周囲の人々が苦悩の末に流そうとした事実をあっさりと告げる真っ直ぐな声。
巨大なゴミ袋をサンタクロースのように担ぎ、ゴミ挟みを手にした真糸凱だった。
カカシの味方は、帯人と倫だけではなかったのである。
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2009/12/25
UP DATE:2009/12/27(mobile)