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□クリスマスまで待って
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クリスマスまで待って
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【4‐4】 誰よりも離れたところからカードの宛名を読み取った凱はツリーへ向かって花壇を飛び越えた。
「とぅっ☆」
いらない掛け声や、無駄なアクションを交えながら、器用に片手でぬいぐるみとカードをツリーから外すとイルカの前に降り立つ。
「はぁっはっはっはっ! 青春☆だなぁ、イルカ☆」
「は? はぁ……」
まだ状況が飲み込めていないイルカにカードとぬいぐるみを手渡すと、凱はゴミを拾いながら駆け去っていく。
なんというか、彼の一挙手一投足には暑苦しいのに寒々しい、不思議な感覚に陥る。
まだ残る異様な余韻に飲まれたまま、それでも疾風は友人の手元をのぞき込んだ。
淡い水色で丸みが強調された小さなイルカのぬいぐるみは、見るからにふかふかとしていて手触りも抜群に良さそうだ。
銀箔の雪に縁取られた雪深い夜の森をトナカイがひくサンタのソリが駆けるクリスマス・カードも品がいい。
見た目だけなら、上等なクリスマスの贈り物だと言える。
差出人さえ、アレでなければ。
疾風としては、あのぬいぐるみに盗聴器でも仕掛けられていないか、即刻調べたいところ。
いや、その前にまずカードの文面を検閲しなければ。
だが、そんな友達の老婆心も知らず、イルカはカードの宛名を不思議そうに眺めながら呟いた。
「……疾風。これ、貰っちゃって、いい、の、かなぁ?」
「多分、イルカ宛てなのだから、良いと思いますよ」
手渡されてしまった以上、今更取り上げることはできない。
とにかく、カードの文面をチェックし、先輩方に注進するのが先だと考えた疾風はイルカを促す。
「それより、カードにはなんと?」
「え? あ、えぇっと……」
言われてイルカは慌ててカードを開く。
特に恥じらう様子もないのは、恋愛絡みとは思ってもいないからだろう。
どちらかといえば、不可解な怪文書的な扱いかもしれない。
「……えっと?」
それも仕方がないか、と差し出されたカードの文面に目を落とした疾風は思う。
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2009/12/26
UP DATE:2009/12/27(mobile)