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□クリスマスまで待って
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クリスマスまで待って

【5‐1】
クリスマスの後で



 大学部カフェテリアの最終営業日。
 フロアの片隅で、猿飛明日磨は一人ごちた。

「オレたちのこの1ヶ月は、なんだったんだろうな……」

 手にはカカシからイルカへ贈られたクリスマス・カード。

 ぬいぐるみは明日磨の正面でカフェテリアの限定メニュー、特製生クリームプリンにご満悦なイルカの手元に置かれている。

 ちなみに───どこで誰がかは明らかではないが、金属探知機と電波探知機で確認済みだそうだ。

 そして明日磨が手にしたカードには、クリスマスを祝う言葉と、カカシの名前だけ。
 懸念していた言葉どころか、連絡先すらない。

 はっきり言って、拍子抜けだ。

「……どういう、こと、なんでしょう?」

 イルカの隣でほうじ茶をすする疾風も訝しげにしている。

 カカシの思惑が、さっぱり分からない。

「ま、アレだ」

 一か八か、人目につくアプローチをしてきたのだ。
 わざわざ警戒を強めるような文言は書けなかったのだろう。

 そう、明日磨は推測する。

「帯人の配慮だろうよ」

「なるほど」

 では、それがなければ一体どんな文章が並んだのか。
 想像しかけて、2人ともやめる。
 実に懸命な判断だ。

 カカシの思考など到底理解できるものではない。

 なんとかと天才は紙一重と言うが、表裏一体なら実質そのもの。
 普通でないからこそ、天賦の才だ。

 一応、カカシの才能は評価しているものの、人間性については全くもって容赦も遠慮もなくこき下ろす。
 多分、友人だからこそ。

「ねえ、アス兄」

「なんだ、イルカ?」

「その、畠カカシさんって、どんな人?」

 嬉しそうにプリンをつつくイルカの問いに、なんと答えるべきか明日磨はとっさに答えが浮かばない。

「高等部では一番の有名人ですね」

 言ったはいいが、疾風もどこまで告げていいか迷っていた。

「成績は優秀ですし、スポーツも得意なようです。顔立ちも整っていますから、多くの女生徒が騒ぎ立ててます」

 こういう表面的な部分だけなら、カカシは本当に非の打ち所がない。
 
「ただ……」

 言いにくそうに言葉を切った疾風は、明日磨へ探るような視線を向けてから再び口を開いた。

「ちょっと、素行が風変わりで、先生方も持て余している生徒、らしいです」

 肝心な部分は誤魔化しながらも、要注意人物であると告げた疾風。
 任せた明日磨は心中でよくやったと喝采をあげる。

 しかし、にっこり笑ったイルカの一言は、過保護な保護者会の面々に重い衝撃を与えるものだった。

「ふぅん。なんか、そんな人ばっかりだよね」

 類は友を呼ぶってこと、かなぁ。

 
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2009/12/26
UP DATE:2009/12/30(mobile)
 
 
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