Nessuno Vive Per Sempre

□小夜鳴き鳥は死の運命、
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 大らかな母と不在がちな父、横暴な家庭教師、騒がしい友人たちや居候、それにボンゴレ───それぞれに伝えたい事は山のようにあるし、大事なことやくだらない事をひっくるめてやり残したことばかりだ。
それなのに、理不尽な家庭教師に撃たれた時のように、復活するなんてできるはずもない。

───オ、レ……死、んじゃう、の……

 誰かを恨みはしない。
だって、事故だ。
恨むより、何も知らない一般人を人殺しにしてしまったことは悔やまれる。

 それにしても、あれだけの死闘を生き延びてきたくせに、こんな呆気なく終わるなんて。

 もしも、次があるのなら、やり直しがかなうなら、自分はダメダメのダメツナで構わない。
ただ、命懸けの後継者争いや時空の覇者なんて騒動に巻き込まれたりせず、みんなが傷ついたりすることのない。
平和で平凡な、マフィアになんかならなくていい、そんな人生を……。


───願う?


 死の闇に飲み込まれゆく綱吉に聞こえたのは、問いかける声。


───望むの?

 
 そう問われ、思わず返す。

───な、に……を?……

 きっと、今まで考えていたことを、だろう。
ではこの声は、綱吉の心を読んだのか。
そもそも、何者なのか。

───だ、れ?……

 もう動かない身体で首をめぐらせようと、真っ暗な瞳で周囲を見渡そうとした綱吉は次の瞬間、落ちたはずの屋上に立っている自分に気付いた。

「……え? あれ? なんで?」

 自分の身体のあちこちを見ても、触っても、怪我どころか痛い所などないし、制服にだって汚れや破れは見当たらない。
では、今のは夢だったのかと背後を見れば、無慈悲にも支柱の外れた柵が所在なげに揺れている。
けれど周囲には綱吉へ暴行を働いていた生徒の姿はなく、代わりにとても見覚えのある顔をした見知らぬ少女が向かい合って立っていた。

 黒いローファーに時代錯誤な白い3つ折りの靴下を履き、白いスカーフと襟のラインが鮮烈な印象の黒いセーラー服をまとって左腕には紫紺の腕章をし、長い黒髪を夕空に靡かせた少女は、見紛うことなく風紀委員長───雲雀恭弥と瓜二つ。

「えぇーっ!! なんで、雲雀さんが女子の格好ーっ!?」
 
 思わずツッコミを入れた綱吉だが、彼女に違和感はまったくないのだ。
むしろとびきりの、純和風な美少女───ちょっと無表情で、凛々しすぎる気がするけれど。

 いや、そもそも雲雀恭弥だって美少年なのだ。
ちょっとどころでなく言動が常軌を逸しているだけで。

「そ、そっか。雲雀さんって美人なんだなぁ……」

 綱吉が自身の衝撃に折り合いをつけたと同時に、彼女が口を開く。

「ふぅん。君にはこう見えるのか」

 話し方までどこか雲雀恭弥と似ていたが、さすがに声は少女らしいものだった。
そして、先程綱吉の心に問い掛けてきた声だとも分かる。

 彼女は興味深そうに自身を検分しながら、突拍子もない話しをしだす。

「まずは、形をありがとう、と言っておくよ。沢田綱吉」

「……は?」

 今、彼女は、なんと言ったか。

 形、とは。

「私は生死を司り、魂を掌る、姿無き、名無き、時無き者」

 それは、どういう、ことか。

「この姿と声は、私の存在を知覚した君が便宜的に見いだした、言わば君が造り出したものだ」

 正直に言えば、綱吉の頭では彼女の言葉はなに1つ理解ができない。
 
 
UP DATE:2013/11/29
write by kaeruco。
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