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□消失点 〜 Vanishing Point 〜
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第7の選択
 
@ 火影に報告



 日が暮れたこともあり、部下を帰宅させたカカシはその足で3代目火影の元へ向かった。
 この任務を請け負った初めに逐一、報告をするように言われていた事もある。
 けれど、この先へ向うにはやはり、3代目の考えを聞き、その威光を借りたい。
 里長を利用する不敬は棚上げするとして、まだ接触出来ていないナルトとの面談を取り付けるために。

「3代目、今よろしーでしょーか?」

「なんだぁ、カカシか?」

 執務室を訪れると、猿飛アスマがいた。
 2人の穏やかな雰囲気からして任務の報告などではなく、愚痴混じりの教え子自慢でも、していたのだろう。

「えーと、3代目。例の件、途中経過を報告に……」

 横目にアスマを見やり、言外に聞かせても良いか確認する。
 カカシとしては、手掛かりになりそうなので彼にも聞いて欲しいと考えていた。
 
「構わん。話せ」

 それは3代目も同じなのか、息子を視線だけで留意する。
 意を組んだアスマも面倒に巻き込むつもりかと嫌な顔をするものの、話を聞く気はあるようで頷いて先を促す。

「まだ、分かった事はないに等しいのですが……」

 そう前置いて、カカシは続ける。

「……うみのイルカ、という少年を、ご存知ですか?」

 途端、3代目とアスマは息を飲み、瞠目する。
 やはり、既知のようだ。

「……イルカが、どうしたのじゃ?」

 動揺を押し隠し、カカシに応えた3代目はさすがだ。
 アスマはまだ茫然としている。

「……俺たちは、彼の存在を知りませんでした。なのに、イルカという名を知って、初めてナルトと目を合わせた瞬間と同じ感覚を味わいました」

 まずカカシが話したのは、イルカの存在を知った経緯。
 ナルトを唆して巻物を盗み出させたミズキという教師の過去を探る中で、カカシと部下2人が気に掛かったのは彼が九尾事件で失ったという幼馴染みだった。
 ミズキの同僚と、婚約者のツバキから聞き出した情報からなんとかたどり着いたのが、うみのイルカという名前。
 その名前を知った瞬間にあの喪失感を覚えたことから、この少年が鍵なのだと考えていることまでカカシは話した。

「で? そのうみのイルカくんって、どんな子だったんです?」

 3代目がイルカを知らなければ里の資料を片っ端から当たる覚悟もしていたが、猿飛親子の様子からそれは杞憂だと安堵する。

 懐かしげに目を細め、3代目は語る。

「……そうじゃのう。イルカは、お前と正反対の子供らしい子じゃったな」

「ああ。アイツのイタズラにゃ手を焼かされたが、小憎たらしいオメエに比べりゃ可愛いもんだったなぁ」

「……オレを引き合いに出す意味が分かりません……」

 憮然と返すカカシだが、イルカの為人は理解できた。

 自分の幼少期は思い出すまでもなく、傲慢で嫌味な子供だったと自覚している。
 きっと、イルカは天真爛漫で伸びやかに育っていたのだろう。

「……あの、そんな子が、なんで?」

 九尾事件が起こった時、真っ先に避難したのは非戦闘員である里の人々。
 特に子供たちが優先された。
 
 
write by kaeruco。
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