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□消失点 〜 Vanishing Point 〜
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第4の選択
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B 任意
(部下が望めば同行) 翌日、里を裏切って監獄に拘留されたミズキとの接見を果たしたカカシではあったが、事前に読んでいた調書以上の証言は得られなかった。
初対面の自分では聞けない──気付けない事もあるかと考えて彼の教え子であった部下も一応連れて来てはみたけれど、会話にはならなかったように感じる。
ミズキとの接触が目新しい証言も取れずに終わった以上、ナルト本人との面会を早くにすべきところだが、手続きにまだ時間が必要だと言われている。
さて、どうしたものか。
「……あの、カカシ先生」
「ん? どったの、ヒナタ?」
演習場への道をのんびりと歩くカカシの後ろを、監獄からずっと固い表情で俯きがちに着いてきていたヒナタが呼ぶ。
この少女は酷い人見知りで自分から話しかけることは殆どないが、その代わり他人を良く見ていた。
《白眼》という見透かす瞳術を受け継ぐ血族に生まれたせいもあるのか、何気ない言動からその人物の本質を見抜く観察眼に優れている。
まあ、それだけの才がありながら自分に自信が持てず、常に挙動不審なくらいにオドオドモジモジしているのはどうかと思うが。
だから、そんな彼女が特別監獄でのミズキとの接見に同行すると自分から言い出した時は、正直驚いた。
上官のカカシにも欠片ほどの敬意も見せないサスケなら、きっと檻の無い所で数百人の凶悪犯に囲まれたとしても涼しい顔で皮肉を言い、襲いかかられたとしても不敵に笑って叩きのめすだろう。
けれど友人にもはっきりと言えないヒナタが、里の重罪人ばかりを集めた監獄へ行くなんて自分から言い出すとは流石に想像出来なかった。
まあ現実、監獄に入る前から緊張しているのか固い表情をしていたし、ミズキとも挨拶を交わした程度の会話だけだったから、やはり連れて来たのは失敗だったかとカカシの方が反省していたのだけれど。
「あの、ミズキ先生、は……友達の、敵討ちが、したかったんだと、思うんです」
「友達、ねえ……」
確かに、あの男は言っていた。
散々、自分勝手でお門違いの恨み辛みを並べ立てた末に、ぽつりと。
───アイツが死んだっていうのに、あの化け物がのうのうと生きているなんて、おかしいじゃないか……
あの事件の時、既に上忍だったカカシより1つ年上のミズキはまだアカデミーに在籍していたという。
当時は第三次忍界大戦の末期でカカシのように才能ある子供は促成され忍になっていた。
つまり、彼の才とはその程度なのだろう。
だからあの時は、彼も友人も皆、守られていたはずだ。
それでも、子供が全員無事だったわけではない。
九尾が出現してから避難が完了するまでの間にも、多くの犠牲者が出ている。
きっとその中に、ミズキの友人も居たのだろう。
「……不思議、なんです……」
俯いたまま歩きながら、戸惑いがちにヒナタは告げる。
「私……ミズキ先生の、友達なんて、知らない、のに……」
その人の事を、考えると。
そう呟くヒナタは痛みを堪えるように胸を押さえ、懐かしさと寂しさをない交ぜにした微笑を浮かべていた。
「なんで、なのか……ナルトくん、が……笑ってる顔、思い出して……」
write by kaeruco。
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