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□消失点 〜 Vanishing Point 〜
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ミズキの友人がナルトの生まれたあの日に死んだというのなら、その後に生まれたヒナタがその人物を知るはずがない。
カカシにしても、年が近いという外にミズキとは接点もなく、同じ里に暮らしていたから過去に彼らとすれ違ったことはあるかもしれないが、個人としての認識は不可能だ。
「……そう、か……」
なのに、カカシもミズキが失った友人を思えば、どういう訳だか覚えのないナルトとの思い出に繋がる。
友人らしき少年たちとアカデミーを駆け回るやんちゃ坊主。
呆れ顔で見やるサスケや、遠巻きに見つめるヒナタまでも。
そして、彼らを見守る教師のミズキと、見知らぬ誰か。
「……調べてみますかね」
綻びを漸く見つけた。
面識のない子供と、かつていた少年。
彼らが、鍵だ。
ナルトにはまだ会えそうになく、既に居ない者には二度と会えないけれど。
術を解き、この消失感が埋まったら、と考える。
「ね、ヒナタ」
「なんですか?」
不意に足を止めて振り返り、俯いた顔を覗き込んで、笑いかけた。
「ナルトとは、仲良かったの?」
瞬間、朱をぶちまけたようにヒナタの顔面は染まった。
「え? ええ! えええーとっ、あのっ、わたしっ、ナルトくんっ、とはっ……」
激しくドモリながら告げられる言葉を拾って繋ぎ合わせれば、行き会えば挨拶を交わすぐらいで特に親しかったのではないらしい。
まあ、お子様なナルトと恥ずかしがり屋のヒナタならそんなものだろう。
それでも、ヒナタがナルトに好意を寄せていたのは分かる。
「そっか」
頷いて、幼い想いを肯定してやるけれど、カカシにはこの年頃の少女たちが抱く恋愛感情など正直分かりはしない。
自分が彼らの年頃だった時は、不要な物と切り捨てて顧みることもなかった。
だが、この状況でもあの子供に好意を寄せる存在に安堵する。
思い返せば、監獄の禍々しい門で普段はオドオドとしているヒナタが毅然と前を向いていた。
きっと彼女の想いは、甘く優しい幼恋だけではない。
里の理不尽に押し潰されそうでもたった独りで立とうとするナルトの姿に、日向という大家を背負う自分と重ね、あの子のようでありたいと憧れたのだ。
このまま指導を続けたら、ミズキが潰えさせたナルトの夢を彼女が継ぐかもしれない。
「ま。どーなりますかねえ」
不確定要素だらけの未来に気分を浮上させ、カカシは軽い足取りで演習場へと入っていく。
監獄への同行を誇示したサスケは1人で修行をさせていたが、組み手に掛ける体力は残しているだろうか。
なんて心配もしながら、次の行動も算段をつける。
ミズキの過去を洗うには、やはり聞き込みか。
だとしたら、相手は。
【続く】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
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WRITE:2014/03/31
UP DATE:2014/04/01(mobile)