拍手倉庫

□消失点 〜 Vanishing Point 〜
13ページ/43ページ



第5の選択
 
A 元同僚



 翌日、午後も遅くなってからサスケとヒナタを伴い、カカシは忍者アカデミーの教官室を訪れた。
 既に授業を終えた放課後のせいで子供たちの姿もない静かな校内に懐かしさより違和感を覚えるのか、卒業したての部下2人は落ち着きがないように見える。

 カカシがアカデミーに通ったのはもう二昔も前で、戦時中でもあり促成される子供の中で飛び級を果たした為に在籍期間は1年と短かったから、懐かしさより新鮮さを感じた。
 幾度かの崩壊と改築を繰り返し、外見は見慣れていても、内部の構造が変わり、設備も年々新しい物が増えているせいもあるだろう。

「どーも。お忙しい中、お手数おかけして」

「いえいえ、これも仕事のうちです。なんなりとお聞きください」

 主任教官だという、恰幅の良い壮年の男性教員が3人を出迎え、応対してくれた。
 
 確か、カカシがアカデミー生の時分に新米教師だった人で、記憶にはないけれど良い教え子ではなかった自覚があって、少々気恥ずかしい。
 だが、相手は長年の教員生活でそんな元生徒を何人も見てきたらしく、教官室の向かいにある会議室へと案内する。

 事前に聴取に行く旨と理由を伝えてあったので、その部屋にミズキと関わりのあった教員が揃っていた。

「早速ですが、ミズキという教師について皆さんの正直な評価と、分かる限りで構いませんので交友関係をお聞きしたいんですけど?」

 カカシの質問に、教員たちはそれぞれ答えていく。
 時々、言葉に詰まるのは、かつて教え子であったサスケやヒナタを気にして言葉を選んでいるように思えた。

 元同僚であったアカデミー教員の話しをまとめると、ミズキという男は一見人当たりの良い真面目で生徒思いの良い教師だった。
 けれど、どことなく上昇志向というのかより高い能力や権力を求めているように思え、自己顕示的な言動やアカデミー教員という職務を里の上層部との繋がりと考えているような態度も見受けられたらしい。
 
 酒の席で、自分は優秀なのだからもっと評価されるべきだ、上忍にだってなれるのに、なんて愚痴をこぼすこともあったという。

 その反面、ミズキと個人的に親しく付き合っていた人間は殆ど居なかったようで、交友関係というものは全く掴めなかった。

「あの、……」

 アカデミーでの聞き込みは成果なしかとカカシも見切りをつけた頃、1人の女性教員が遠い記憶を手繰り寄せるように呟きをもらす。

「去年の、慰霊祭の日、だったと思います。慰霊碑への道ですれ違ったミズキ先生が女性とご一緒していて、声を掛けられたんです。確か、友人に婚約を報告するって……」

 それだ、と思わず叫びかけ、カカシは逸る心に自制を掛けつつ、慎重に尋ねた。

「その、女性か、友人の名前は?」

「ええ、と。そう……ツバキさん、とおっしゃっていたかと。彼の同僚だと挨拶をしたら、その方も中忍だと……」

 どこの部署に所属しているかまでは、と恐縮する女性教員へカカシは安堵を含んだ笑みで労う。

「いえ、十分です。ありがとうございました」

 ミズキの婚約者だという女性───ツバキの所属は特殊な部署に配属されていなければ任務受付所で調べられるはずだ。
 
 
write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ