拍手倉庫
□消失点 〜 Vanishing Point 〜
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葬られている場所が正確に分からないままだから、広大で無数の墓石が並ぶ中を虱潰しに探さねばならない。
けれど、まったく手掛かりがないわけではなかった。
ミズキの言葉を思い出せば、分かる。
友人だったのなら年齢はミズキと余り変わらないだろうし、九尾事件当時はアカデミー生だった。
つまり大まかな生年と、はっきりとした享年も手掛かりだ。
「サスケ、ヒナタ。探し物は分かってるな?」
移動の途中に確認すれば、無口な2人からは頷きが返る。
「ツバキが間違えて覚えてる可能性もある。似てる名前にも注意して。生年と享年もだ」
あと、とカカシはヒナタに優しい目を向けながら、厳しい言葉で警告しておく。
殆どは遺体どころか遺品すら納められていないとは言え、墓地なのだ。
「《白眼》は使うなよ、ヒナタ」
「は、はいっ」
見なくていい物まで“視”てしまわないよう注意だけし、探索する区画を2人の部下に割り振って、カカシも墓石の名を見て回る。
だが、幾つもの良く知った、覚えのある名を見ていく作業は一歩毎に気が滅入っていく。
しっかりと踏みしめて意識的に歩き、名前の確認だけを機械的にしていなければ、この場に崩れ落ちそうだ。
それでも、探す。
心のどこかで、彼の名があるわけがない、なければいいのに、と願いながら。
だが、日が傾いて空が色を変えだした頃、カカシはサスケやヒナタとともに墓地の片隅で一つの墓石を見下ろしていた。
刻まれた名は、うみのイルカ。
生年はカカシより4つ下で、九尾事件の当時───つまり享年は10歳。
両隣には両親なのか、同じくうみのという名が刻まれている。
手掛かりは、見つかった。
それなのに、3人は途方にくれる。
見ず知らずの人が喪われたことで覚える、どうしようもない喪失感。
そして、これからどうすべきなのか、先の見えない不安。
次にすべきことは、なんなのか。
カカシは考えた。
【続く】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
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WRITE:2014/06/01
UP DATE:2014/06/01(mobile)