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□消失点 〜 Vanishing Point 〜
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第9の選択
 
A とにかく3代目に報告



「そうか……。で?」

 カカシからの報告を聞いた3代目火影の声音は、夜遅くに訪れた事を差し引いたとしてもいつになく厳しい。
 失望すら滲む視線を向けられるが、何を問われたかカカシには分からなかった。

 3代目の許可を得て面談したナルトを介し、九尾から聞いた話を一言一句漏れなく伝えている。
 今はその報告であり、一介の忍でしかないカカシなど里の意向で動く駒の一つに過ぎない。
 特に今回の事は里の大事なのだ。
 何も間違っていない、はずだ。

「……以上、です」

「そう、か」

 3代目火影は咥えた煙管から深く肺の奥まで吸い込んだ紫煙を殊更ゆっくりと吐き出し、カカシを見据えて託していた思いを語る。

「こ度の事に最初に気付いてワシに注進し、調査を進めてきたお主の見解を聞きたかったのじゃがな……」
 
 再び一服し、目を伏せた火影は退室を促す。

「まあ、良い。明日、主だった者に告げよう。ご苦労じゃったな、カカシ」

 これでカカシの任務は終わり、この件についての裁量は全て3代目へと移った。
 里全体に掛けられた術への対処となれば、それは当然。

 けれど、何かが、引っかかる。
 釈然としないのは自分が最初に気付いたからか、それとも。

 だが結局、自身でも判然としない気持ちを訴えることもできず、カカシは黙って火影の元を辞した。


 


 翌朝、火影の執務室に招集されたのはカカシ率いる下忍7班のサスケとヒナタ。
 アスマが面倒を任された10班のシカマル、チョウジ、いの。
 紅が指導する8班のシノ、キバと赤丸、そしてサクラ。

 昨夜まで調査で動いていたカカシと、夕べ話しを聞いたアスマはこの招集の意図を悟っていた。
 集められた下忍は全員がナルトの同期であり、それぞれ程度の差はあるがなんらかの違和感なり喪失感なりを覚えていたらしい。
 彼らが術の綻びを探る手掛かりになると3代目でなくとも考えるだろう。
 
「さて、朝早くからお主らを呼び集めたのは里の大事に関わることじゃ。心して聞け」

 3代目が下忍たちとその上官へと話したのは、何者かによりこの里の住民全てに何らかの術が掛けられて記憶の改竄がされている可能性があるということだった。
 術や術者については未だ不明であり、探っている最中。
 何故か記憶の違和感に気付くきっかけがナルトであること。

 聡い者は分かっただろう。
 ナルトの同期であった彼らが最も術に気付く可能性が高い、と。

「ここ最近に限らん。何か気になっておる事があれば申してみよ」

 3代目火影に促され、下忍たちは思いつくままぽつりぽつりと話しだす。
 1人が話し出せば、他の者も連動して思い出す事があるのか、かつてカカシがサスケやヒナタから聞いた以上の情報が引き出されていく。

 下忍たちの話しは主にアカデミーでの出来事が多かったが、下忍選抜後の事も少なくはなかった。
 特にサクラの主張する班の構成については誰もが違和感を覚えていたらしい。
 
 
write by kaeruco。
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