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□消失点 〜 Vanishing Point 〜
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 しかも中忍試験は本戦の最中に、大蛇丸が砂隠れの里と共謀して木ノ葉崩しと称したクーデターを起こす始末。
 木ノ葉隠れの里に常駐する忍を総動員して対処に当たったが、砂隠れが一尾の人柱力を引き出して来たので、かつての九尾の言葉に縋ってナルトを兵器のように使わなければならない事態。
 結果的にはシカマルをはじめとした下忍達の活躍もあって大蛇丸が率いる音隠れの里と結局は唆されただけの砂隠れの里を退けたが、3代目火影を筆頭に多くの忍が喪われたのだ。

 3代目の葬儀が終わり、里の上層部が次の火影を選定し始めるのと同時に、5代目候補に挙げられていた自来也は初代火影の孫である綱手を新たな火影として探し出すべく里を立つと宣言した。
 里の意向でまた二人となった部下共々、自来也の護衛という名目の逃走防止のお目付役に就くこととなったカカシは待ち合わせた大門へ向かう途中、気になる二人連れを見咎めて足を止める。

 団子屋の店内で席に着いて茶まで手にした寛いだ状態でいながら、笠を深く被ったまま赤黒い雲の意匠が特徴的な外套を羽織った二人。
 通りに面した席に座る方は、傍らに身の丈を越える長大な刀と思しき物を置いている。
 
 気にはなるが、これから重要な任務へ出向く直前───待ち合わせた時間はとっくに過ぎている───でもあり、どう対処すべきか悩む。
 そこへ偶然にもアスマと紅が連れ立ってやって来た。

「よう! お二人さん…。仲のよろしいことで……」

 デートですか、と巫山戯た事を口にしながら視線で店内の二人連れを示せば、それだけで彼らも察してくれる。

「バーカ。私はアンコに団子を頼まれたのよ」

「お前こそ、こんなところで何やってる?」

「いやね……。これから任務なんで待ち合わせ場所に向かってんだけどさ、遅刻した言い訳をどーしよっかと……」

 常と変わらぬ表情で普段通りに会話しながら、店内の二人連れの動きは一つも漏らさず察知し、分析し続ければ、中々の手練れどころではなく油断ならぬ相手だ。

「いー加減行かないと、まーたサスケ達に嫌味言われちゃう」

 苦笑混じりに零した言葉に、奥に座る方が僅かに反応した気がした。
 気付かれたかと揃ってそちらを見やれば、既に姿がない。

 軽く頷きあえば瞬身でアスマと紅が二人連れを追い、カカシは後ろ髪を引かれる思いで部下たちが待つ大門へ向かう。
 これから、任務なのだ。
 分かっているが、どうしても気掛かりで、騒つく胸を抑えられない。

 ついにカカシは足を止め、一つ息を吐いて気持ちを決める。
 次の瞬間には口寄せで忍犬を呼び出していた。

「パックン。悪いんだけど、大門にいる自来也様と合流してくれ。オレは野暮用でちぃっと遅れますって伝えてちょーだい」

「分かった。お主は後から追い掛けてくるのだな?」

「そ。んじゃ、頼んだ」

 お互いのすべきことを確認しあった刹那、カカシは瞬身であの二人連れを追い、パックンは身を翻して大門へと駆け出す。

 カカシが向かったのは、里の外れを流れる運河の畔。
 アスマは大刀を振るう方と刃を交わし、紅はもう一人と幻術合戦を繰り広げていた。
 直感的に紅の分が悪いと見たカカシは影分身をアスマの援護に、本体で川面に逃れた紅の救援を試みる。

 アスマを相手に未だ笠も取らず身の丈を越える大刀を軽やかに操りながら水遁まで仕掛けてくる相手に影分身で同じ術を返すと同時に、本体は紅の背後を取った相手の更に後ろへ回った。

「何でお前まで出てくんだっつーの」

「いやー。さっきはお二人にお願いしちゃったけど……」

「ま! 気になるじゃない。やっぱ……」
 
 
write by kaeruco。
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