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□消失点 〜 Vanishing Point 〜
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 不服そうなアスマと紅に影分身と本体で同時に言い訳しながら、目の前に無防備な背中を晒す侵入者を探る。

「はたけカカシ……」

 僅かに見返り、両目の写輪眼で見据えてくる青年には見覚えがある。

 うちはイタチ。
 かつて、わずか13才で暗部の分隊長にまでなった才長けた忍。
 そして、実弟であるサスケを除く一族郎党を皆殺しにして里を抜けたお尋ね者。

 思い出すのは、中忍試験の予選後に自来也から聞かされた話。
 大蛇丸が一時期だけ所属していた組織に里を抜けたイタチも名を連ねていたという。
 その組織は少数だが凶悪な犯罪者ばかりが集まり、大蛇丸が脱退した後は二人組で各地の隠れ里から術などを集めているらしい。
 組織の名は、暁。

「これは驚いた……。道理で私の術を……」

 背後にきな臭い組織まで存在するイタチへの対処を算段している横合いから、アスマと対峙していた者が嬉しげに語る。

「本当にイタチさん以外にその眼を持っている輩がいたとはね……。名は、確かコピー忍者のカカシ……」

 私も自己紹介しておきましょう、と笠を脱ぎ捨て顔を晒すと、何故かアスマが瞠目した。
 
 イタチよりやや年嵩で、長く伸びた黒髪を後ろへ流した青年。
 鼻筋を跨ぐ刀傷が目をひく、どことなく顔岩に刻まれた初代火影に似た風貌。
 ただ、抜け忍の証しの様に傷が付いた額宛は霧隠れの物で、手にした大刀も霧隠れの鬼人と謳われた桃地再不斬から奪った首斬り包丁だと嘯く。

「うみのイルカ。以後お見知りおきを」

 穏やかで人好きするはずの顔に、獰猛な肉食獣じみた笑みを浮かべる彼を見て、カカシは悟った。
 自分が何を失ったのかを。

 
【了】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2014/10/02
UP DATE:2014/11/01(mobile)
 
 

 
消失点 〜 Vanishing Point 〜

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