I'll die before I'll run
□さよなら
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さよなら〜 Good-bye Dear 〜
勝負は、決した。
里を抜けようとしたサスケと、力ずくでも引きとめようとしたナルト。
使える限りの術と技に込められたそれぞれの精一杯の思いがぶつかり合った2人の戦いは、終わった。
立ち尽くすサスケの足元には、精も魂も尽き果ててナルトが横たわる。
互いの顔にはなんの感情もない。
ただ、戦いの疲労だけが強く浮き出していた。
空が急速に雲に覆われて行き、周囲は暗さを増す。
細くナルトを照らしていた陽光も途切れた。
その傍らに、サスケの額宛が解けて落ちる。
だが、そのことに──木ノ葉隠れの里になど何の感慨もないかのように、表情は動かなかった。
ただじっと見つめる者の名を呟く。
「ナルト……」
けれど、その言葉からも声からも、感情は抜け落ちていた。
多分ナルトはまだ生きている。
「………」
しかしサスケは止めを刺そうとはしない。
長い沈黙の果てに何を思ったのか、何を言おうというのか。
「オレは……」
けれど言葉はそこで途切れ、サスケは顔を上げた。
見上げた暗い空から、まるで2人の戦いを嘆くように強い雨が落ち始める。
強く冷たい雨に打たれようともサスケの心が揺らぐことはない。
彼は、行くのだ。
「ぐっ……!」
戦いの余韻で感じずにいた痛みが、急激にサスケの体に蘇りだしていた。
左腕を押さえて跪き、咽喉に詰まった血を吐き出す。
ふと間近に見たナルトの顔。
その瞬間、サスケは動けなくなっていた。
何かが、彼の中で弾ける。
* * * * * サスケが大蛇丸に狙われていると知れたのは、木ノ葉崩しの1ヶ月前。
中忍試験の最中だった。
だが、この企みが大蛇丸自身によって暴露され、里の上層部が知った時にはもう手遅れだったのかもしれない。
何故なら既にサスケは呪印を打ち込まれ、あまつさえその力を1度使っていたのだから。
呪印から逃れる術はない。
施されれば死ぬか、その力に従うかだ。
過去、同じく呪印を施されたみたらしアンコは自身の精神力と、火影による封印術で辛うじてその力に飲まれずにいる。
けれどそれは木ノ葉隠れの里で研究を重ねた10余年を経た今でも、解呪術は編み出されていないという事実でもある。
果たしてサスケにアンコと同じことが望めるかどうか。
3代目火影以下、里の上層部の判断は、否。
一族を兄に殲滅されて以来この里に寄りどころを見出せず、たった1人の兄へ幼い復讐心をたぎらせる子供の考えだ。
何よりサスケは大蛇丸を知らなすぎる。
ただ一度接触し、その圧倒的な力を見せ付けられたのでは、魅せられるだけだろう。
直接の上司であるカカシの考えは違っていたが、優秀な彼もまだ若く老獪な指導者たちには及ばない。
だからこそ3代目火影は、うちはサスケに1つの術を施していた。
里を抜ける、その瞬間までの暗示術を。
その詳細は3代目から託された一人の暗部により5代目火影・綱手に引き継がれている。
「……全く、食えない爺さんだねぇ」
地下らしき暗い部屋に綱手の声だけが響く。
write by kaeruco。
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