宝物

□ちゃきっ様
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バイトしましょ♪

〜 序 〜



 一目見た時から気に入らない相手と言うのは確かに存在する。
俺、はたけカカシにとってうみのイルカと言う男は正にそう言う相手だった。


 「今日は、はたけ上忍。」
アカデミーでこの子達の担当をしていたうみのイルカと申します。
 そう、挨拶しながら手を差し伸べて来たのは如何にも人の良さそうな…忍らしくない、男。
中忍以上のベストを着ている以上ソコソコの実力はあるのだろうが…
余りにもぼけた空気に、口布の下で思わず顔を顰めた。
 それでも世間(と書いて火影と読む)の眼が在ったので一応挨拶だけはして置いたのだが。
全身から滲み出る棘のある空気までは隠し果せていなかったらしく…火影の突き刺さる視線が痛かったり、した。
 ともあれ、挨拶さえ済ませてしまえばもう滅多に会う事も無いだろうとタカを括っていたのだ。

…まさか受付と兼任になるとはね。
 受付所前で、溜息を付く。
考えて見れば今年送り出された下忍の大半はあの人の教え子なのだ。
まだ『忍』として出来上がっていない彼等の力量を踏まえて任務を割り振る為には、今までの担当者の意見が必要となる。
 子供を『大切に育てる』と褒め言葉にも嫌味にも取れる教育をする木の葉ならば、コレは当然の事態だったのだ。
が。それで俺の『感情』の方が納得する訳も無く。
 俺の想いも知らず、担当の子供等は元担任と談笑中である。
受付が空いていた事が災いして、3人ともすっかり長居の体勢になっている。
「俺、今日給料日だろっ一楽奢ってくれってばよ。」
 金髪の意外性No1ルーキーが叫び
「駄目でしょナルト!そんな奢らせてばかりいちゃ。」
 紅一点がすかさず窘める。こんな時ばかり良いチームプレーだな〜と眺めていると
「…俺達で奢る。」
 ぼそっと、こんな関わり合いは毛嫌いしていそうなもう一人が口を挟んだ。
「あ、それ賛成!流石サスケ君!」
 センセイ、ね良いでしょう 
 サスケを褒めた勢いでイルカに、そして三代目に猫撫で声でおねだりするサクラ。
早くも『くの一』の技量に目覚めつつある様子である。…女は怖い。
「そうじゃな、もう僅かで交代じゃ、それからなら良いじゃろう?」
 語尾が微妙に上がって、中忍に返事を求めている。だが、里長に言われて断れる忍が居る訳がなく・・・
「判りました。お前等、もう少し待っててくれよ。…カカシ先生。」
 あ、しまった と思った時には遅く
「一緒に如何ですか?」
 と穏やかな笑顔で誘われた。
 今までも何度が誘われたのに一緒に行ってないんだから、態々誘うんじゃねぇ…と思いつつ
「はぁ、すみません。俺はこの後ちょっと…」
 オトナの返答をちゃんとする。…この辺り随分人間が丸くなったな、と思うと感慨深い。
尤も、そんな俺を眇めた目で見詰める火影辺りは違う意見を持っていそうだった。

「お前等、明日の集合時間は判ってるな 遅刻するなよ!」
 そして。言って立ち去ろうとした俺の背中に
「判ってるってば。」「先生こそちゃんと時間に来てよね。」「…ウスラトンカチ」
 三人三様の返事が投げ掛けられたのだ。
 
 
「はぁ…」
 表面上和やかな接触は終り、俺は人生上々に辿り着くとドカッとソファに腰を下ろした。
あの人に限らず内勤の中忍達との接触は、長年暗部に浸り込んでいた俺には未知との遭遇レベル…なのだ。
皆が皆、殺気なんて何処かに捨ててきちゃいました…的風情の忍ばかりで調子が狂ってしまう。
そりゃ、依頼に来る『一般人』を脅す訳には行かないのだから仕方ないのだろうが。
 と、その時
「はたけ。」
 と、余り覚えの無い声が掛けられた。
「何?」
 振り返れば里常駐の上忍の一人。特に親しくも無い…と言うか良く知ら無い、相手。
「お前、アルバイトしないか?」
「はぁ?」
 思わず胡散臭げに見上げてみれば男は慌てた様に「大した仕事じゃないから」と、言う。
「だから、な。ちょっと手伝って欲しいんだよ。」
 済まなそうに拝んで来る相手に。暇だった俺は、話だけ聞く事にした。


「中忍の素行調査〜?」
 引っ繰り返った声になってしまうのは仕方無いだろう。
「何でそんなモン…」
 馬鹿らしい、と言おうとした俺にそいつは『〜両だす!』と、極めて具体的に…Cランク並の金額を提示してきた。
訊けば知り合いの美女(未確認)がそいつを見初め、交際を申し込むに当って調査を求めて来た…のだそうだ。
「そんだけ出すんなら里に『正式』に申し込めば良いでしょ」

 
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